華やぐバラ色を纏った、極薄の永久カレンダー

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    パテック フィリップの「5940」は、ある種の奇跡に近い腕時計である。閏年まで自動判別する機械式の複雑機構、永久カレンダー搭載のコンプリケーテッド・ウォッチ。多彩な表示は大抵の場合、厚いムーブメントに結びついてしまうものだが、パテックはその弊害を完全に封じ込めた。ケース厚で1㎝を切る永久カレンダーは、腕時計としてのスタイルに優れ、驚くほど腕に馴染む。自動巻きでありながらこの薄さまで追い込めるのは、並みの技では不可能だ。それでいて技術を誇示する気負いは一切なく、腕時計としての完成度の高さで評価されるコンプリケーションである。 

    その永久カレンダーに2017年、新しい魅力を備えた新作モデルが登場した。栄光の品番に〝R〞の記号を添えたそれは、ローズゴールド仕様の「5940」である。以前よりラインアップされていたホワイトゴールド版の凛々しさに対し、この新作はどこまでも華やいで見える。たとえていえば、マティーニとシャンパーニュのように、どちらも魅力的ながら酔い心地は異なる。 

    パテック フィリップの中でも希少な部類に入る「5940」の特徴的なクッション形のシェイプは、均整がとれて美しい。ローズゴールドの新作ケースに合わせたのは、入射光をデリケートに抑えるシルバー・グレイン仕上げの文字盤に、ゴールドのアプライド・インデックスと時分針。ブレゲ数字とリーフ針は、品格を備えた本物のヒストリカルなディテールだ。赤みを帯びたゴールドの色調は、温かく映える。 

    文字盤レイアウトは、右に月と閏年、左に曜日と24時間表示、下に日付とムーンフェイズ。永久カレンダーでありながら極めて整然とした佇まいが、ノーブルなトーンと引き立てあう。アリゲーター革ストラップのチョコレート・ブラウンも目に快い。薄さの心地よさと併せ、毎日でも着けたいと思わせる、魅惑の複雑時計なのである。