フォルクスワーゲンの新モデル「アルテオン」、 そのルーツはバブル期の日本車にありました。

  • 文:Pen編集部

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フォルクスワーゲン「アルテオン」。縦にも横にも広い大胆なフロントグリルからは、フォルクスワーゲンの挑戦心が感じられます。

車名はフォルクスワーゲンが中国市場向けに販売している高級車「Phideon(フィデオン)」と「Art」の造語だといわれています。

フォルクスワーゲンのアッパーセダン「CC」の後継として、昨年のジュネーブサロンで公開されたフォルクスワーゲン・アルテオンは、背を低く設定し、ルーフラインをなだらかにした4ドアクーペ。数年前からドイツの高級車に流行りのスタイルです。メルセデス・ベンツではCLS、アウディではA7、BMWでは6シリーズグランクーペなどがそれに該当するでしょう。クーペスタイルの高級車は若々しくスタイリッシュな印象。ただこのパッケージ、かつて日本でも流行したちょっと懐かしいコンセプトでもあるのです。

1985年に誕生したトヨタ「カリーナED」(EDは『エキサイティング・ドレッシー』の略)はセリカをベースにしたクーペセダン。そしてマツダ・カペラをベースにした「ペルソナ」など、バブル景気のもとで、若者が乗るセダンは低く長くスタイリッシュなスタイルに変化しました。バブル時代を知る方には釈迦に説法かもしれませんが、当時の人々は閉塞感のある現在とは真逆ともいえる価値観をもっていました。夜にはディスコに行繰り出し、休日は接待ゴルフ。クルマはより美しく楽しい高価なモデルがもてはやされ、自らを飾るステータスでもありました。しかしバブル時代といえども若者はやはり若者。さほどお金が自由にならない彼らには、中型セダンをベースにした手頃なスペシャルティカーと呼ばれるクルマが受けたのです。ただこの手のクルマ、4枚ドアながらも居住性は悪く、下手すれば後席は小柄な女性しか乗れないようなモデルもありました。ベースは普通のセダンですから、運動性能もスポーツモデルにはおよばず、バブルの終焉とともにその姿を消したのです。

アルテオンのグレードはR-Line 4MOTIONとR-Line 4MOTION Advanceのふたつ。運転システムの内容などが異なり、後者には駐車支援システムのPark Assistやアラウンドビューカメラが搭載されます。

しかしそれから時が経ち、時代も移り変わり、ドイツメーカーの高級車にも同じような動きが起こります。先陣を切ったのが、メルセデス・ベンツ CLS。アウディA7、BMW6シリーズ グランクーペと続き、フォルクスワーゲンはパサートCC、CCというように……。ただし、これらのモデルがかつての日本車と違うのは、ミドルセダンではなくアッパーセダンをベースにしたところ。もともと広くて大きいクルマなので、スタイリッシュにアレンジしても居住性にはまだまだ余裕があります。しかもよりスポーティになって、大型セダンにはできないサスペンションの味付けもできる。年配のオーナーが多いアッパーセダンのマーケットに若い人を呼び込む、救世主的な存在になったのです。

リアから見たアルテオンのプロポーション。アウディ A7にも近い、リアが垂直に落ちるファストバックスタイル。

インテリアは水平線を基調にまとめられたシンプルなデザイン。前方の視界がやや狭く感じてしまうのが難点かもしれませんが、それもスタイリッシュ!?

エンジンは、最高出力280PS、最大トルク350Nmを発生する2.0リッター TSIエンジン。トランスミッションは7速DSGで、フルタイム4WDシステムの4MOTION付き。今回フォルクスワーゲンがパサートの名を捨てて発売したアルテオンは、そんなスタイリッシュ・アッパーセダンマーケットのなかで、もしかしたらいちばん信頼できる存在かもしれません。居住性が高く、値段も不当に高くない。装備や機能もライバルにはかないませんが、そこがが売りなのだと言えるでしょう。

フォルクスワーゲン・アルテオン
●エンジン:2.0ℓ 直列4気筒インタークーラー付きターボ
●最高出力:280ps
●最大トルク:350Nm
●トランスミッション:7速DSG
●車両価格:¥5,490,000から

問い合わせ先/フォルクスワーゲンカスタマーセンター TEL:0120-993-199

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