タッシェンの豪華本に「フェラーリ」が登場。マーク・ニューソンデザインのパッケージ、豪華な内容に悶絶!

  • 写真:奥村純一
  • 文:サトータケシ

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マーク・ニューソンがデザインしたブックスタンドも魅力的なアート・エディション。12気筒エンジンがモチーフで、金属部分は手作業で曲げられている。カムカバーの部分が開き、そこに本が収められる。

2018年の夏、クルマ好きの間では1962年型フェラーリ250GT0が4840万5000ドル(約54億円)で落札されたことが話題になりました。フェラーリのヒストリックカーは、商品というよりアート作品であり、同社は単なる自動車メーカーを超えた特別な存在になりつつあると言えるでしょう。

では、フェラーリはどんな経緯を経て神話的な存在になったのでしょう。創業70周年を記念して、そのヒストリーを美しいビジュアルとともにまとめた『Ferrari』が刊行されました。といってもさすがはフェラーリ、『創業70周年記念社史』のようなありがちなものではなく、装幀も中身も、そして価格も驚くべきものでした。

写真は、シリアルナンバー1〜250まで、つまり250冊限定のフェラーリ アート・エディション。V型12気筒エンジンをモチーフにしたブックスタンドは、プロダクトデザイン界の大物、マーク・ニューソンが手がけたデザインです。ちなみに価格は360万円(諸経費別)。もうひとつ、やはりニューソンデザインのアルミ製ディスプレイケースに収められたフェラーリ コレクターズ・エディションは72万円(諸経費別)で、シリアルナンバーは251〜1947まで。フェラーリが創業した1947年にちなんで、計1947冊の限定となっているのです。

514ページにわたる大作のページをめくって驚くのは、「こんな写真があったのか」と驚くようなショットがたくさん掲載されていることです。職業柄、フェラーリに関する写真はかなりの数を見てきたつもりですが、気難しくてマスコミ嫌いで知られた創始者エンツォ・フェラーリのプライベートショットなど、貴重な写真がこれでもかと続きます。

さらに驚いたのは、10章立ての構成となっているなかで、「Racing is dangerous.」と題してレース中の事故のシーンを集めたチャプターがあること。日本の自動車メーカーだったら考えられませんが、フェラーリがそもそもレーシングチームであったことや、命を賭けた極限の戦いでブランドを築いてきた歴史を肌で感じ取ることができました。

 

アート・エディションには、故セルジオ・マルキオンネ(フィアット・クライスラー・オートモービルズとフェラーリの元CEO)、ジョン・エルカン(フェラーリ会長)、ピエロ・フェラーリ(フェラーリ副会長)の3氏のサインが入る。

著者は、イタリアの高名な作家でジャーナリストのピーノ・アッリエーヴィ。エンツォ・フェラーリとの共著もあるといい、イタリアではF1放映のコメンテーターも務めている。

250冊はすでに完売! 「フェラーリ」はやはり半端ない。

マレーネ・タッシェンは1985年独ケルン生まれ、ロンドンの大学で経営と心理学を学ぶ。タッシェンに入社後は、ビジネス開発担当ディレクターを経てマネージング・ディレクターに就任。

1963年にオーストラリアで生まれたマーク・ニューソンは、80年代に東京の家具メーカーIDEE(イディー)でデザインを担当した経歴をもつ。その後、フォードのコンセプトカーやペンタックスのK-01、空港のラウンジなど、幅広い分野で活躍する。

この本の企画・編集を担当したのは、ドイツの世界的なアートブックブランドであるタッシェン(TASCHEN)。1980年に独ケルンの小さなコミック書店としてスタートしたタッシェンは、ケルンとロサンゼルスに本社を置くほか、世界の7つの都市に支社を構える国際的な出版社へと成長しました。

創始者のベネディクト・タッシェンとともに同社の経営に携わるのが、長女のマレーネ・タッシェン。日本における『Ferrari』の刊行を記念するイベントのために来日したので、お話をうかがいました。

フェラーリ家のプライベートな写真と、事故の章に驚いたことから伝えます。

「5年ほど前に、父が共通の友人を介してピエロ・フェラーリ(フェラーリの副会長)とランチをともにする機会がありました。そこからこのプロジェクトはスタートします。したがって、フェラーリ家のみなさんや、フェラーリ本社との信頼関係がベースにあったのです。珍しい写真が使えたことや、事故の章を設けたことには、そのような理由があります」

デザイナーにマーク・ニューソンを選んだ理由については、次のように語ってくれました。

「ニューソンさんには何度かデザインをお願いしたことがありますし、彼の著書を弊社で刊行したこともあります。イタリアのミッレミリアというヒストリックカーのレースに自らの運転で参加なさるほど、クルマと運転がお好きだということも知っていました。したがって、彼にフェラーリの仕事をお願いするのは、ごく自然な流れでした。彼のアイデアを最初に見た時に、私も父もその瞬間に虜になったんですよ」

代官山T-SITEで開催した『Ferrari』の発表会は、世界的に見て最も規模が大きなものだったとのことです。

「フェラーリから、日本は特に大事なフェラーリの市場だと聞いていましたので、東京でこのような刊行イベントを開けたことはとても嬉しく思っています」

ただし、250冊限定のフェラーリ アート・エディションはイベントの時点でほぼ完売。360万円(諸経費別)の“70周年記念社史”がすぐに完売するフェラーリは、やはり半端ないブランドだと思い知らされました。

銀座 蔦屋書店  TEL:03-3575-7755

タッシェン公式サイトwww.taschen.com