SUVの始祖「ジープ・ラングラー」、日本は世界で2番目に売れている国でした。

  • 写真&文:サトータケシ

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愛知県、豊田市のオフロードで、「ジープ」ラングラーの試乗会は行われました。アイコニックなフロントはいつ見ても頼りになるタフなイメージです。

とある試算によると、世界的に見て、10万ドル(約1120万円)クラス以上の高級車の約6割をSUVが占めるそうです。ひと昔前では考えられないほどのSUVブームですが、ご存じの方も多いように、SUVの始祖は「ジープ」です。

第2次世界大戦でアメリカ軍におけるジープの活躍に刺激を受け、イギリスでは「ランドローバー」が、ドイツでは「メルセデス・ベンツ」Gクラス(通称ゲレンデヴァーゲン)が開発されたのです。こうして、悪路に強い四輪駆動車が各地で生まれ、それがSUVへと進化しました。

ジープというブランドは、自動車メーカーの合従連衡の影響をもろに受け、さまざまな企業の手に渡りました。ウィリス・オーバーランド→カイザー→AMC→クライスラー→ダイムラー・クライスラーときて、現在はFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)が所有しています。

いくつかのモデルをラインアップするジープ・ブランドのなかでも、軍用車両だったジープMBの後継とされるジープ・ラングラーが、11年ぶりにフルモデルチェンジを受けました。写真をご覧になって、あまりデザインが変わっていないと思われる方も多いと思われます。それはその通りで、メルセデスのGクラスと同じように、デザイン的にはキープコンセプトのモデルチェンジです。変わらないというよりも、これだけの歴史を持つモデルだけに、完成されたデザインだと表現するほうが適切かもしれません。

ただし、いざ乗り込むとインテリアはモダナイズされています。シンプルでタフな造形でありながら、樹脂の質感やスイッチの意匠、文字や数字のフォントで現代風に見せているあたりは、カシオのG-SHOCKを彷彿とさせます。

今回は、幸運にもオフロードでの試乗を経験することができました。早速、オフロードコースに向かいます。

1941年に登場した「ウィリス」MBを始祖とする、ジープ・ラングラー。写真はさらにオフロード性能を高めたジープ・ラングラー・アンリミテッド・ルビコン。2019年春に日本へ導入される予定です。

リアスタイルにも無骨さを感じます。どんな荒野でも走れる、アメリカの開拓魂が現在のデザインにも受け継がれています。

クルマの限界が訪れる前に、ドライバーの限界が訪れる。

樹脂の質感の向上や、スイッチやレバーの意匠を新しくすることで、ぐっとモダンな印象になったインテリア。スマートフォンの連携など、機能的にも最新になりました。

「4H AUTO」モードでは自動的に駆動力を配分するフルタイム四駆、「4H PART TIME」では悪路での走破性能を高めるパートタイム式四駆になります。

新型ジープ・ラングラーには3.6リッターV型6気筒と2リッター直列4気筒という2種のエンジンをラインアップ、ボディは2ドアと4ドアがあります。今回試乗したのは、日本での売れスジだと思われるV6エンジンと4ドアの組み合わせ。ちなみに4ドアモデルはジープ・ラングラー・アンリミテッドと呼ばれます。

見上げるような登坂路も、先が見えないほどの急な下り坂も、ジープ・ラングラー・アンリミテッドは何食わぬ顔で走破します。スキー場のコブ斜面のようなモーグル路では、4本のサスペンションが大きく伸びたり縮んだりして、タイヤが路面を捕まえて離しません。

大きなコブに乗り上げて1輪が宙に浮き、3輪走行になっても心配ご無用。じんわりとアクセルペダルを踏むと、エンジンの大トルクがしっかり地面に伝わり、余裕をもってピンチを脱出しました。はっきり言って、クルマの限界が訪れる前に、ドライバーの限界が訪れます。

ちなみに、外観はキープコンセプトですが四駆システムはアップデートされており、「4H AUTO」モードを選ぶと状況に応じて自動的に四輪に適切な駆動力を配分する、フルタイム四駆システムが採用されました。

興味深いのは、こうしたオフロードコースでも乗り心地が良好だったこと。ハンドルから伝わるショックもマイルドです。このあたり、単にオフロードを走れるだけでなく、丸一日走り続けるようなケースを想定しているのでしょう。本物だと感心しました。

ジープ・ラングラーは、最近のSUVのように乗用車ライクな構造ではなく、頑丈なはしご型フレームからサスペンションが生えるという、伝統的なラダーフレーム構造を継承しています。さすが本家、悪路走破性能で妥協することは許されなかったのでしょう

そのぶん、一般道でも高速道路でも、最近のプレミアムSUVではあたりまえになっている、滑るような乗り心地は期待できません。ちょっとごわごわするし、路面の凸凹を突破するとクルマ全体が揺さぶられます。強靱で耐久性に優れるラダーフレーム構造には、こうした弱点もあるのです。つまり、本格的なオフロード性能と引き替えに、オンロードでの快適性は多少犠牲になっているのです。

でも、これが必ずしも悪いことだとは思いません。乗用車のように走るSUVなら星の数ほどあります。ジープ・ラングラーは、真の意味でヘビーデューティに使える四輪駆動車という我が道を選んだのです。

本格的な四輪駆動車というキャラクターが評価されて、いまや日本はアメリカに次ぐジープ・ラングラーの市場です。2010年には約1900台に過ぎなかったジープ・ブランドの日本における販売台数は、2017年には1万台を軽く突破。そのうちの約4割をジープ・ラングラーが占めるといいます。

スタイリングだけでなく、スピリットも継承する頑固一徹の姿勢は変わっていませんから、新型ジープ・ラングラーも従来型と同じように、日本のファンから支持を集めると予想します。

ジープ・アンリミテッド・スポーツ
●エンジン:直列4気筒DOHCターボ
●最高出力:272PS/5250rpm
●最大トルク:400Nm/3000rpm
●サイズ(全長×全幅×全高):4870×1895×1845㎜
●車両価格:¥4,590,000(税込)~

●ジープフリーコール TEL:0120-712-812

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