風景とともにある道具を、小さな街から発信する。
写真:永井泰史 文:小川 彩

#17

ゆるやかな片流れの屋根、薪ストーブの煙突、そして針葉樹の外壁から北の国の空気を感じます。

前回に続けて訪ねたのは、同じく東川町の「SALT」。こちらは、前回紹介した「LESS」の浜辺さんと同世代の米山勝範さんによるライフスタイルショップです。

自身が尊敬するつくり手のものを伝えたいと生まれ故郷に戻り、米山さんがSALTを立ち上げたのは2009年のこと。13年にはいまの場所に移転し、建物も新たにしました。店の名は、人間が生きていくのに必要不可欠な「塩」に含まれるミネラルのように、その土地の人に必要とされるお店になりたいと名づけたものとか。「ものの売り買いのなかで、ウソがないようにしたいんです。とりわけ生活を豊かにするものを売るのは、背景にあるストーリーを売ることと同じですから」と米山さん。穏やかな口調の中に芯の強さを感じます。

温かみのある針葉樹の架構はまるで林のようで、米山さんの私物テントも自然に佇んでいます。

米山さんの個室のようにクッションやブランケット、テキスタイルを並べたテントの中。

ファッションブランドのアイテムを中心に雑貨が並ぶ店内。なかでも充実はマウンテンリサーチのアイテム。

戸外には、米山さんがDIYで施工したデッキが。買い物途中、コーヒーを片手にくつろぐ客も多いとか。

世界的に活躍するスノーボーダーで「GENTEM STICK」を主宰する玉井太朗さんのスティックも販売。

そんな米山さんがセレクトするのは、ファッションアイテムやアウトドアプロダクトともに自身が長く使っていて心地よいもの。マウンテンリサーチやandWanderなど、アウトドアウエアとしてスペックとデザイン性を両立したものから、自然素材でシンプルな日常着をつくる宮崎県都城のアウリコまで幅広いセレクトを楽しめます。

ほかにも、地元の木工作家に依頼してつくったペンドルトン社のファブリックをシートに貼ったオリジナルスツールや、同じく地元の作家によるエゾジカの角製ディアホイッスルなど、コミュニティとつながりのあるアイテムも魅力的。アウトドアアイテムも豊富で、同じくマウンテンリサーチのランプやガスバーナーをはじめとしたプロダクト、ステンレスへら絞りの野外食器「アナルコ カップ 」などが揃います。

「冬になると、東川町ではスキーやスノーボードなどのウィンタースポーツが日課のように身近になります。いい山がそこにある、という感覚がもてることは幸せですよね」と米山さん。自身もアメリカの世界大会に出場するほどのスノーボーダーで、世界のボーダーたちの憧れでもある日本製の手づくりのスティックも年を通じて販売しています。

ショップ裏手には林が広がり、別のデッキへと縫うように続く道もDIYで施工しています。

道内はもとより、遠方から遊びにくる来訪者にもゆっくり過ごしてもらえるよう、店内にはカフェを併設します。珈琲は、隣町の美瑛にある珈琲店「ゴーシュ」が自家焙煎する豆をドリップ。持ち帰りでも、店内で飲んでもOKです。せっかくならば、戸外のウッドデッキでスツールやデッキチェアに座ってのんびり風景を眺めて楽しむのがおすすめ。アイテムについてはもちろん、ウィンタースポーツやトレッキング、リバーサップなどのアクティビティについて語り合うのもいいかもしれません。

テント、タープ、デッキチェア、そしてマグカップやランプなどのアウトドアグッズは、都会暮らしでは自然とのつながりを意識するためのアイテムになりがちですが、ここでは日常の延長線上にあります。生活に溶け込んでいくようなもののストーリーをきちんと伝えることが大切という米山さん。言葉だけではなく、生活を楽しんでいるSALTや米山さんの暮らしの状況がそのツールになっているのかもしれません。

1 / 2p

次号予告

ファッションについて 語るときに あの人の語ること。