ネイティブアメリカンと出会った、「広島」の椅子。
写真:永井泰史 文:小川 彩

#02

冬の朝、澄んだ光の中でたっぷり淹れたコーヒーとともに、ゆっくりと過ごしたい。そんな時間を思い浮かべてしまうダイニングチェアが、マルニ木工のHIROSHIMAのマウンテンモーニング・スペシャルモデルです。イベント会場で限定発売。W56×D53×H76.5×SH43cm。¥112,320

ウールのあたたかな手触りとネイティブアメリカンのモチーフを取り入れたペンドルトンのテキスタイルは、「山の朝」という響きにぴったり。作原さんのアイデアで、ロゴマークを座面の隅に入れました。写真はビーチ材マットホワイト塗装仕上げのモデルにサンミゲル柄の座面。

布がもつあたたかな肌触りを求める季節。第1回に続き、今回も椅子とテキスタイルのコラボレーションアイテムを紹介します。いまや世界でも人気を集めるマルニ木工の名作椅子、HIROSHIMAが出会ったのは、米国オレゴン州のポートランドで長年愛されてきたファブリックメーカー・ペンドルトン。実はこのユニークなコンビネーション、インテリアスタイリストの作原文子さんの提案から生まれたものなのです。

2015年春、仕事で訪れたポートランドでペンドルトンの古着と出会った作原さん。そのあたたかみとウールのクオリティに、すっかり心奪われたといいます。同じ頃、深澤直人さんがデザインしたHIROSHIMAをスタイリングする機会のあった彼女は、両者の魅力を組み合わせると面白いのではないかと、マルニ木工に伝えました。「HIROSHIMAは、ミナ ペルホネンともコラボレーションをしています。そのモデルはかわいらしい女性的なイメージだけど、ペンドルトンは男性的でHIROSHIMAの異なる魅力を実現できるのではないかと思ったのです」とマルニ木工の広報、橋爪沙織さんはいいます。両者の思いがひとつになり、今回の限定モデルにつながりました。

HIROSHIMAの樹種とカラー、テキスタイルの組み合わせは作原さんによるディレクション。普段は樹種の味わいに魅力を感じるファンが多いものの、マウンテンモーニングモデルはファブリックとの組み合わせがカラーリングの魅力を引き出し、関係者のうちでも人気だとか。全14種、限定100脚、¥112,320~。購入者には先着で素敵なプレゼントも。早めのチェックがおすすめです!

座面にモチーフを合わせるために出てしまった端切れを利用してクッション(33×33㎝)もつくりました。表と裏で異なるテキスタイルを使っているので、気分で見せ方を変えられそうです。こちらもマルニ木工の家具工場で生産されているため、縫製もしっかりしています。各¥12,960

このコラボレーションで誕生した椅子は、作原さんが主宰する「マウンテンモーニング」の限定モデルとして販売することとなりました。ブランドでもメーカーでもないマウンテンモーニングとは、スタイリングの仕事を通じて親交のあるフォトグラファーの作品を紹介する機会になればという思いから、作原さんが5年前にスタートしたプロジェクトです。

「写真のアートとしての価値を、インテリアのスタイリングを通じて伝えたいと思ったのがきっかけです。そのために、見せる機会をつくるプロジェクトをはじめました」と、作原さんは言います。オリジナルプリントやポストカードを販売するイベントを開催する中、やがて彼女のスタイリングのために協力してくれるショップやメーカー、そして編集者やデザイナーたちが仲間に加わっていきました。これまでの出会いがきっかけとなって、オリジナルプロダクトを製作し、新たにポップアップショップを開催するまでにプロジェクトは育っていったのです。

「mountain morning “WHITE”」でお披露目となるオリジナルグッズは、ほかにも多数。ここでは一部を紹介します。ベンチ上、左から:“good time, good work” というキャッチフレーズを入れたVOIRY STOREのキャップ。¥4,212 MARKAWAREの吊り編機でつくった日本製のトレーナー。脇に縫い代がないので、ジャストフィットでも気持ちよい。¥17,280 リチャードジノリとコラボレーションしたテーブルウエア。イベントタイトルの頭文字「W/MM」をカーキ色でプリント。グラフィックはアートディレクター・平林奈緒美さんによるもの。コーヒーカップとソーサー¥4,000、スープ皿¥3,800、など限定数を販売。 ベンチ下:プレイマウンテンの布バケツにはブランド名とマウンテンモーニングをかけた「PMM」のロゴ入り。¥4,500

「マウンテンモーニング」を主宰する作原文子さん。「仕事を通じて出会った、さまざまなクリエイターやメーカーの方々との縁が、マウンテンモーニングにつながっています。今後さまざまな可能性を秘めたプロジェクトとして仲間とともに育てていきたい」といいます。

「生活の要素がいろいろとあるなかで、すがすがしいものを通じて、みんなが元気に、楽しい時間を迎えようとしている力になるように」という作原さんのスタイリングに共感する現場のスタッフたちの思いが、「マウンテンモーニング」という場に集まるものの魅力にもつながっていると言えるでしょう。

12月12日(サテライト会場は11日より)にスタートする「mountain morning “WHITE”」は今回が3度目の開催。会場には、参加するフォトグラファー37人の作品と、アート、インテリア、ファッション、そしてフードまでさまざまなクリエイターやメーカー50社近くのアイテムが一堂に会します。メイン会場の代官山T-SITE GARDEN GALLERYとサテライト会場となるマルニ東京で、このHIROSHIMAマウンテンモーニングモデルも限定販売されます。人と人とのつながりから誕生した、イベントを代表するアイテムである椅子の魅力に、ぜひ触れてみてください。