ロンドンの広場から生まれた、多面体スツール
Vol.53
ロンドンの広場から生まれた、多面体スツール
アーノルド サーカス スツール

マルティノ・ガンパー

文:佐藤早苗 編集:山田泰巨

「アーノルド サーカス スツール」は、マルティノ・ガンパーがロンドンのアーノルドサーカス広場のためにつくったスツールです。八角形のひとつのコーナーだけがツンと飛び出した形状は、八角形の屋根をもつ広場中央の野外ステージからきているのかもしれません。

座面は八角形のうちのひとつのコーナーだけが90度に。飛び出した直角部分は垂直、そのほかの部分は緩やかに広がって安定感も抜群です。重さは約2kg。サイズはW430×D350×H440mm。

路上で拾った椅子や友人たちの不要になった椅子を集めて再構成し、100日で100脚の椅子を作る「100 chairs in 100 days」プロジェクトで一躍、有名になったマルティノ・ガンパー。日本では丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で展示も行いました。以降も椅子を使ったインスタレーションなど、デザインとアートの領域で垣根を越えて活躍するデザイナーのひとりです。

そんな彼が手がけた「アーノルド サーカス スツール」は、もともとは2006年にロンドンのコミュニティのためにデザインしたもの。イーストロンドンのショーディッチにある広場、アーノルドサーカスで開催される屋外イベント時に使われることを想定したオフィシャルスツールです。

素材には100%リサイクル可能なポリエチレンプラスチックを採用し、軽量でスタッキングもできるのでイベントの搬出入時もかさばりません。8つの角をもつスツールの座面は、正方形と正八角形を組み合わせた形状。この形は、アーノルドサーカス広場の象徴である八角形の屋根をもつ野外ステージを連想させ、ガンパーが地域の人々のことを思ってデザインしたことが伝わってきます。また、ひと回り小さな「アーノルディーノ スツール」も、のちにラインアップに加わりました。

ガンパーの運営するオンラインショップでピスタチオグリーンの「アーノルド サーカス スツール」を購入すると、その販売利益がアーノルドサーカスの地域再生に貢献する団体「フレンズ・オブ・アーノルドサーカス」に寄付されます。

ひとまわり小ぶりな「アーノルディーノ スツール」は「アーノルド サーカス スツール」と並べると親子のよう。サイズはW37.5×D31.5×H310mm。

プラスチック粉末をモールドに入れ、熱を加えて回転させる回転成形は小ロットでつくることができるので、カラー展開も豊富。中は空洞なので、スタッキングができるのはもちろん、ひっくり返して物を入れて使うこともできます。

ロンドンの広場から生まれた、多面体スツール