古典なのに新しい、アイコニックな一脚。

  • 文:竹内優介(Laboratoryy)
  • 編集:山田泰巨

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Vol.52
古典なのに新しい、アイコニックな一脚。
ルイゴースト

フィリップ・スタルク

文:竹内優介(Laboratoryy) 編集:山田泰巨

数十年にわたってデザイン界のトップランナーであり続けるフランス人デザイナー、フィリップ・スタルク。2002年にカルテルから発売された「ルイゴースト」は、そんなスタルクの代表作のひとつです。ルイ15世時代に流行したロココ様式の椅子をモチーフに、現代的にアップデートした椅子は凜とした佇まいで人気を集め、たちまちミリオンセラーとなりました。静閑な気品を感じさせる透明なフォルムは、まさに王の名にふさわしい一脚です。

透明で儚いイメージながら、空間に置くと場の雰囲気を変える力強さをもつ、カルテルのアイコンともいうべきベストセラーモデルです。サイズはW540✕D550✕H940✕SH470mm。

1949年、パリに生まれたフィリップ・スタルクは美術学校を卒業後、ピエール・カルダンでアートディレクターを務めるなど、若くからその才能が注目されていました。82年、当時のフランス大統領であったフランソワ・ミッテランの依頼によりエリゼ宮の内装を担当したことで、その名はより広く知れ渡ります。続く84年には「カフェ・コスト」のファッショナブルな空間が高く評価され、いよいよ評価は盤石なものに。建築、インテリア、家具やプロダクトデザインなど、その活躍の場はますます広がっていきました。

98年、スタルクはカルテルから世界初のポリカーボネート一体成型の透明な椅子「ラマリー」を発表します。軽やかながら衝撃に強く、耐久性もあり、7脚もスタッキングできて、屋外でも使用できる優れモノ。これを発展させた「ルイゴースト」は、ルイ15世時代の椅子をモチーフにしたクラシカルな形が特徴です。カルテルは自社の代名詞ともいえるポリカーボネート樹脂の研究を続けており、脚部まで同一素材で一体成型する技術開発によって「ルイゴースト」は実現されました。古典的なスタイルに新しい素材の表情をミックスして独創的な優雅さを演出するところに、スタルクらしいセンスが光ります。

ポリカーボネート樹脂を使用した一体型射出成形でつくられています。衝撃や傷に強く、屋外での使用も可能。「ルイゴースト」は6脚までスタッキング可能。

透明なクリスタイルの他にクリアタイプにはブルー、グリーン、グレー、オレンジ、イエローの6色が用意されている他、不透明の白と黒を加えた8色が展開されています。