工芸とモダニズムが出合う、木立のような椅子。
Vol.44
工芸とモダニズムが出合う、木立のような椅子。
ピルッカ チェア

イルマリ・タピオヴァーラ

文:竹内優介(Laboratoryy) 編集:山田泰巨

冬の木立を思わせる素朴なシルエットの「ピルッカ チェア」。フィンランドのデザイナー、イルマリ・タピオヴァーラが1955年にデザインしたこの椅子はフィンランドに根づく伝統的な家具に着想を得たものです。母国の日用品をモダンに昇華させたデザインは、どこか懐かしい親しみと心地よさを感じさせます。

2枚の厚板をダボで繋いだ座面と小枝が広がるような脚が特徴。このシルエットは負荷を分散させる構造的な役割も果たします。ピルッカシリーズは、スツール、チェア、ベンチ、テーブルのシリーズ展開。現行では展開されていないラウンジチェアやローテーブルは、生産数がわずかであることからコレクターズアイテムにもなっています。サイズはW390✕D440✕H810✕SH430mm

アルヴァ・アアルト、ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエら、名だたる巨匠のもとで学び、独自のデザインを追求したイルマリ・タピオヴァーラ。彼はキャリアを重ねるうちにフィンランドの伝統的な家具に着想を得て、国産の木材を用いた家具をデザインするようになります。

座面と背もたれにパイン材、フレームにバーチ材を用いた「ピルッカ チェア」はネジを使うことなく組み上げられる椅子です。子ども用の椅子と見紛うほどにコンパクトで、接合部で3点に枝分かれした脚は小枝のよう。しかしこの構造が荷重の負荷を分散させ、丈夫で軽やかな椅子を実現させているのです。この脚を特徴とする「ピルッカ」シリーズは、テーブルのほか、サウナの休憩時に涼むためのスツールなどを展開します。

直線的な座面の小口をテーパードすることで軽やかに見せ、両端をシェイプした丸棒のフレームは黒い塗装で座面とのコントラストを際立たせモダンな表情を実現しています。クラフトの温もりを感じさせる素朴な表情ながら野暮ったさがない、タピオヴァーラの優れたデザイン力を感じられる名作です。

工芸とモダニズムが出合う、木立のような椅子。