Vol.37 イームズラウンジチェア&オットマン

  • 文:佐藤早苗
  • 編集:山田泰巨

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Vol.37
Vol.37 イームズラウンジチェア&オットマン
イームズラウンジチェア&オットマン

チャールズ&レイ・イームズ

文:佐藤早苗 編集:山田泰巨

「イームズラウンジチェア」はオットマンとセットで映画やドラマにもよく登場し、インテリア好きでなくとも誰もが見たことがあるであろう名作中の名作。木製のシェルにレザーのクッションを組み合わせたラウンジチェアは、1956年の発売当初から現在に至るまで代わりになるものがないユニークな存在であり続けています。

レザーのクッションが身体を優しく包み込むチェアは、一つひとつ手作業で組み立てられています。星型のベースは安定感があり、どの角度で座っても正面が気にならないよう計算されたものだそう。サイズはW832×D832×H813×SH381mm

「使い込まれた一塁手のミットのように、座る人を温かく包み込むチェアを目指した」と、チャールズ・イームズが語る「イームズラウンジチェア」。3つのプライウッドのシェルに包まれたレザーのクッションは、それだけで空間を成り立たせてしまうほど、独特の存在感があります。誰もに手が届く家具を目指し数多くのデザインを手がけたイームズ夫妻の作品のなかでは珍しく高級です。“成功者の椅子”というイメージも強く、アイコニックなこのチェアを手に入れることを密かにひとつの目標にしている人も多いことでしょう。

このチェアは何よりも座り心地を重視し、開発には長い年月がかけられました。その出発点となるのは、1940年代にイームズ夫妻が熱と圧力を加えて、プライウッドを成型する新技法を発見したこと。アメリカ海軍のために開発したプライウッドの添え木などは第二次世界大戦で活用されました。戦後はその方法を家具づくりに応用し、1946年には「イームズプライウッドチェア」が生まれています。その10年後、満を持して発表されたのがハーマンミラーのクラフトマンシップと効率的な大量生産を掛け合わせた「イームズラウンジチェア&オットマン」でした。

仕事や打ち合わせをするためでも、食事をするためでもなく、くつろぐためにつくられたチェア。このチェアの上で過ごす時間のような何気ないひとときが、人生を豊かにしてくれる本当の贅沢なのかもしれません。

座面は後方に向かって沈み、背もたれにも圧力を分散。深く腰掛けると自然と脚が持ち上がり、オットマンもセットで使いたくなります。オットマンのサイズはW660×D546×H438mm

シェル部分には7層の合板を使用。発売当初はブラジリアンローズウッドの合板が使用されていたものの、絶滅の危機に瀕しているため、現在ではよりサステナブルな森林でつくられたサントスパリサンダーやウォールナットなど4種類から選べます。