Vol.29 パントン チェア
Vol.29

パントン チェア

ヴァーナー・パントン

文:佐藤早苗 編集:山田泰巨

世界初のプラスチック一体成型の椅子「パントン チェア」。ヴァーナー・パントンは製造元のヴィトラとともに理想とする美しい流線形のフォルム、強度、そして大量生産と手頃な価格を叶えるため、1963年から90年代まで幾度となく改良を重ね続けました。技術革新とともに進化した「パントン チェア」は、20世紀のデザインを象徴する存在です。

1968年のセンセーショナルなデビューから50年以上たったいまも、色褪せない斬新なデザイン。サイズはW500×D610×H830×SH410mm

デンマーク出身で、アルネ・ヤコブセンの事務所で「アントチェア」の開発にも関わっていたヴァーナー・パントン。一方で、いち早く新素材を取り入れて工業生産を目指した彼のデザインは、カラフルでイノベーティブ。アメリカのミッドセンチュリーモダンに近い存在で、クラフツマンシップと木工家具という典型的なスカンジナビアデザインらしさは感じられません。

パントンは1950年代からプラスチックによる一体成型の椅子をつくろうと、15から20の製造元と実用化に挑戦するも、製品化に必要なクオリティが得られずにいました。そんな彼がヴィトラ創業者の息子であるロルフ・フェルバウムを訪ねたことから「パントン チェア」の開発がスタートします。しかし、彼が思い描くような曲線による繋ぎ目のないプラスチックチェアの製造は、当時の技術においては不可能ともいえる挑戦。数年に渡る試行錯誤の日々が続きます。そして67年、冷圧したガラス繊維強化プラスチックを用いて150脚の試作品が完成。パントンのデザインを象徴する鮮やかな色と、彫刻を思わせる斬新なデザインは、当時のデザイン界に大きな衝撃をもたらしたといいます。

その後もコストダウンと大量生産を目指し、68年に現在の「パントン チェア クラシック」の量産が始まりましたが、依然として多くの手作業による仕上げが必要でした。さまざまな素材を使いながら改良を重ね、プラスチックと射出成形の技術革新が進んだ90年代、ポリプロプレン製の現在の「パントン チェア」の量産化に至ります。プラスチック製の椅子を手ごろな価格で量産化するというパントンの夢が叶ったのは99年、彼が亡くなった直後のことでした。

ひとつの素材で背面、座面、脚部が継ぎ目なく滑らかに繋がるチェアは、「ジグザグ」をつくったへーリット・トーマス・リートフェルトら多くのデザイナーたちも目指した夢のフォルム。

色に強いこだわりをもっていたパントンの意思を継ぎ、カラー展開も豊富。インドアでもアウトドアでも使え、プライベートにもパブリックなスペースにもマッチします。現在は、表面の光沢が美しい強化プラスチック製の「パントン チェア クラシック」と、落ち着いたマットな質感が特徴のポリプロピレン製の「パントン チェア」の2種類に加え、2007年から子ども用の「パントン ジュニア」を展開しています。

Vol.29 パントン チェア