Vol.15 スタンダード

  • 文:竹内優介(Laboratoryy)
  • 編集:山田泰巨

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Vol.15
Vol.15 スタンダード
スタンダード

ジャン・プルーヴェ

文:竹内優介(Laboratoryy) 編集:山田泰巨

世界中のコレクターから注目を集めるデザイナー、ジャン・プルーヴェ。1990年代になるまで彼の家具デザインは半ば忘れ去られた存在でした。敏腕なギャラリストの活動によってその評価が高まり、生前に作り上げたオリジナルのヴィンテージはオークションで高値で取引されるコレクターズアイテムになっています。その代表作「スタンダード」は、1934年の発表から彼が亡くなるまでさまざまな発展を見せたプルーヴェにとっても思い入れの深い作品です。

もともとはフランスのナンシー大学都市のコンペティションをきっかけにデザインされたもの。プライウッドとスチールという当時としては先進的な素材の組み合わせだった。2002年にヴィトラより復刻された。サイズはW420×D490×H820×SH465mm

1901年、フランス・パリに生まれたプルーヴェはアール・ヌーヴォの一派であるナンシー派を率いたヴィクトール・プルーヴェを父にもち、幼少期から美しい工芸品に囲まれた環境で育ちました。16歳で金属工芸家のエミール・ロベールのもとに弟子入り。独立後は、手作りの工芸品から家具や建築へと幅広い分野で活躍するようになります。合理的な構造に基づいて設計されたスタンダードは、椅子に求められる力学を過不足なく表現したものとして知られています。プルーヴェの家具にしばしば見られる特徴的な三角形の意匠は、最小限の要素で最大限の効果を得る力学的に優れた形状です。人が座った時に負担の軽い前脚は細いチューブ、最も荷重のかかる座面と後脚の接合部分には幅を持たせることで軽さと耐久性を実現させているのです。
彼とコラボネーションを重ねたシャルロット・ペリアンやピエール・ジャンヌレの家具とスタンダードをあわせたスタイリングは、プルーヴェが好きな方なら目にしたことがあるはず。どこか素朴なデザインからは人の手の痕跡を感じさせ、その親しみやすさからも人気の秘訣がうかがえます。

座面と背もたれにクッションが施されたモデル「スタンダード SR」。より快適な座り心地を実現。

座面と背もたれにプラスチックを用いたモデル「スタンダード SP」。脚の塗装がマット仕上げになっていることで、プラスチック素材とも調和する。