Vol.12 スーパーレジェーラ

  • 文:竹内優介(Laboratoryy)
  • 編集:山田泰巨

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Vol.12
Vol.12 スーパーレジェーラ
スーパーレジェーラ

ジオ・ポンティ

文:竹内優介(Laboratoryy) 編集:山田泰巨

日頃、家の中で頻繁に動かす家具といえば、それは間違いなく椅子でしょう。ならば、軽くて動かしやすいに越したことはありません。1957年、カッシーナから発売されたスーパーレジェーラは重さたった1700g。“Superleggera=超軽量”の名にふさわしく、子どもが片手で軽々と椅子を持ち上げた広告も有名です。当時その登場は、さぞセンセーショナルだったことでしょう。

正面からのプロポーションは非常にスマート。1700gの重量を実現するために選ばれた木材は、トネリコです。野球のバットにも使われ、硬く曲がりにくい性質があるトネリコです。サイズはW405×D450×H830×SH455mm

現在では数多くのデザイナーと協働する家具メーカー「カッシーナ」が、フランコ・アルビニに次いで二番目に依頼した社外のデザイナーがジオ・ポンティです。建築を中心に、インテリアや家具、家庭用品など幅広い分野で活躍したポンティは、その優れた審美眼でデザイン誌「Domus」を創刊しました。現在でも高く評価されるデザイン誌を通じて自国のデザイン文化を世界に広め、今日に至るまでイタリアデザインの隆盛を築いた父ともいわれます。

軽さだけではなく、極限まで無駄が削ぎ落とされたスーパーレジェーラは、堅固さと軽さの完璧なバランスから成り立っています。もともとは1952年にスーパーレジェーラに先行してレジェーラという椅子が発表されました。これをもとにさらなる軽さを求め、カッシーナの技術力と職人の専門知識、建築も手がけるポンティの構造への探求が結実を見せたのです。

まずそのフレームは、先端を幅18㎜までシェイプし、断面を三角形にすることで十分な強度を保ちながら余分な材料を削ぎ落としています。藤編みの座面もフレームに直接編み込むことで軽量化を図っています。力学的にも最小限の断面とし、軽やかに見せる。普通のようでいて極限まで研ぎ澄まされたデザインが、その魅力をかたちづくっていることに気がつきます。コンパクトなサイズなので日本の住環境にも適しており、ダイニングでの使用もどんなデザインのテーブルにも合わせられます。凛とした佇まいは気品を感じさせ、女性にもお薦めしたい名作椅子です。

製造元のカッシーナでは3階の窓から投げ落とすデモンストレーションが実施されたことも。軽いだけではなく、十分な耐久性もこだわりのポイントです。

断面が三角形に削ぎ落とされたフレームは見る角度で違う表情を生みます。シンプルなデザインですが、背と脚の屈折具合にもジオ・ポンティの洗練されたバランス感覚を感じさせます。