Vol.11 スクラップウッドチェア

  • 文:竹内優介(Laboratoryy)
  • 編集:山田泰巨

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Vol.11
Vol.11 スクラップウッドチェア
スクラップウッドチェア

ピート・ヘイン・イーク

文:竹内優介(Laboratoryy) 編集:山田泰巨

すでに数多くの優れたプロダクトが存在する現代において、近年はデザイナーの担う役割にも変化が見られます。造形的に優れたプロダクトを生むだけでなく、ものを通して問題提起を行うコンセプト重視のプロダクトが見受けられるようになりました。プロダクトとしても魅力を放ちながら、そのユニークな見た目の裏に消費意識に対するメッセージを内包するのがスクラップウッドチェアです。

表情豊かな廃材のパッチワークは、一つとして同じ柄のない1点もの。部材を結合するマイナスネジは、職人が1本ずつ手で締めている。モノ作りに対する真摯な態度がうかがえます。サイズはW380×D460×H800×SH430mm

1990年、ピート・ヘイン・イークが卒業制作のために作製したスクラップウッドシリーズは、彼が脚光を浴びるきっかけにもなった家具です。過剰な生産によって不要になった工業製品や時代を経て廃れた家具を素材に、職人の手を加えることで現代的なデザインに蘇らせる手法はピートの得意とするスタイル。廃材の表情を活かして手作りされたこの椅子には、一点物の作品のように選ぶ楽しさもあります。なるべく環境に負荷をかけずに、優れた製品をつくる。現代のモノ作りにおいてとても重要なことをさりげなく具現化している点に、スクラップウッドチェアの現代的な魅力が感じられます。
廃材を用いたデザインは、いま流行りのインダストリアルな雰囲気のインテリアにも相性抜群です。モダン家具やアンティーク家具のつなぎ役として、テイストの垣根を越えて調和を取る存在にもなるので、見た目のインパクト以上に合わせやすい椅子と言えます。彼の考えにならって、生涯大切にできる椅子選びをしてみてはいかがでしょうか。

ゆったりと座れるアームチェアはダイニングのほか、さまざまなシーンで活躍します。サイズはW550×D520×H750×SH430mm

同シリーズのスツール。スツールとしてはもちろん、サイドテーブルとしてもおすすめです。サイズはW360×D360×H430mm