【東京車日記 番外編】世界初のオープンコクピットボディ、マクラーレン・...

【東京車日記 番外編】世界初のオープンコクピットボディ、マクラーレン・エルヴァのニルヴァーナ・サウンドを体感せよ!?

文:青木雄介

世界初のオープンコクピット・スーパーカー、「マクラーレン・エルヴァ」。サーキットで最も速いマクラーレンとして登場したセナをさらにパワーアップ、マクラーレン史上最も軽量なボディをもつという噂の新モデルだ。2020年4月、そのプロトタイプがひそかに日本初上陸し、一部の報道陣と顧客にお披露目を行った。PenOnlineの人気連載「東京車日記 いっそこのままクルマれたい!」の著者、青木雄介がレポートする。

風の流れが目に見えるようなエルヴァのプロポーション。リアのアクティブエアスポイラーは急制動時に流れる空気を遮断することで、強力なエアブレーキを発生させる。 写真提供:マクラーレン

新型コロナで外出もままならず、うんざりする毎日。そんなときこそスーパーカーは想像力をかきたててくれるもの。コロナ禍の真っただ中で、想像を刺激してくれる新車に出合った。その名も「マクラーレン・エルヴァ」。マクラーレンのハイエンドモデルであるアルティメットシリーズに加えられたこの新顔は、ルーフはおろかフロントウインドーもサイドウインドーもないオープンコクピットなのだ。その姿はまるで「夢のクルマ」を形にしたダイキャストのミニカーがそのまま実車になって目の前に現れたかのようで、感動すら覚える。

エルヴァはヘルメットを装着して走行するのが推奨されていて、ヘルメットボックスも2つ装備されているのね。ヘルメットをかぶって公道走行!? バイクみたいじゃないか? という感想は半分当たっていて、半分は外れている。バイクなら高速になれば車体に身体を寄せて、みずから最適なエアロダイナミズムを生みださなければいけないが、エルヴァは違う。そこにはマクラーレンらしい、F1由来のエアロダイナミズムの追求を印象づけるギミックが隠されているんだ。

車体最前部のディフューザーから取り入れた空気を、ボンネットの真ん中に備えた排気口から排出することで、コクピットを包むようなウインドカーテンを発生させる。 写真提供:マクラーレン

その新発想なエアマネージメントは、フロントノーズを通ってきた空気の流れをボンネット下で上方に向け、コクピットの上を通過して後方に流れるウインドシールドを創り出すというもの。つまりフロントウインドーはなくても、空気の壁でコクピットを包んでしまおうという訳。それが「穏やかなオアシスのよう」とまでいうんだから、穏やかじゃないね(笑)。「本当に!?」と突っ込みたくもなるよね。

まぁ、時速60㎞程度の速度がないとこのウインドシールドは現れないらしいんだけど、それ以上のスピードで走り続ける限り、バイクのように空気抵抗を正面から受けることはないし、雨に降り込まれることもない。これを世界初のエアマネージメントシステム、マクラーレンAAMS(アクティブエアマネージメントシステム)と呼ぶ。正直、こんなこと書いてても、どこか少年コミックの謎理論のように感じてしまうのは許してほしい(笑)。

コクピット内部はあえて外部との境界をあいまいにして、一体化しているような錯覚を覚えさせる。ボディと一体感のある、包みこまれる感覚はこのクルマならでは。シート素材は防水のウルトラ・ファブリックを使用。 写真提供:マクラーレン

究極のエグゾーストサウントを生み出すために、エグゾーストエンドを中低音域と高音域に分担させている。下方が中低音域で、上方が高音域を担当する。 写真提供:マクラーレン

基本的なコンポーネントはマクラーレン・セナから流用され、改変が施されている。カーボンファイバー製のモノケージと呼ばれるバスタブ型シャシーに、4リッターV型8気筒エンジンを採用。馬力はセナより15馬力アップした815馬力で車重は未公開だけど、公道で走れるマクラーレンの中では最軽量とのこと。ゆえに時速100㎞まで3秒を切る究極のスーパーカーにしてロードスター、さらには軽量ゆえに俊敏性も抜群なライトウェイトスポーツカーと言えるだろう。

マクラーレンは、その走行体験を究極のオープンエアースポーツとして、スカイダイビングに例えている。もっとも軽くて強靭なシャシーの剛性感に、運転席に身体を沈めるとコクピットに包まれるようなドライブ感、そしてオープンコクピットによって未来のジェットコースターのような興奮が想像される。「ニルヴァーナ・サウンド」と形容されるその排気音は低音、中音とともに高音用の特別なエグゾーストエンドをもち、解像度の高いオープンサウンドを心底楽しめる仕様になっている。公道とサーキットの中間を想定しているとマクラーレンはいうけど、今のところ、究極のロードスターにして、その軽量さゆえにもっとも研ぎ澄まされたマクラーレンになるのは間違いなさそう。

モチーフになったブルース・マクラーレンが設計し、エルヴァ社が制作したレーシングカーM1A。スペースフレームの超軽量シャシーであり、デザインもまたエルヴァがM1Aの血統であるのが一目瞭然となっている。 写真提供:マクラーレン

マクラーレンは「単なるレトロスペクティブではない」と前置きしながらも、エルヴァにその歴史と意匠のエッセンスを注ぎ込んでいる。このエルヴァという車名は、F1レーサーだった創業者のブルース・マクラーレンが自ら制作の指揮をとった市販車のファクトリーの名前。そしてスタイリングはマクラーレンの原点である、レーシングカーM1Aのデザイン言語を引き継いでいる。2台が並んだ写真は、似ている以上にその佇まいが共通していることに気づくはず。まるで居ながらにして高速走行しているような躍動感をたたえながら、とてもエレガントなんだ。

マクラーレンはこれからPHEV(プラグインハイブリッド)化を強力に進めていくことを表明しているだけに、エルヴァに込められた覚悟とはこれから来る時代へ向けた最後のモニュメントを意味するのかも知れない。その覚悟は不退転のものであり、もしかしたらペトロールヘッズにとっては、終わりの始まりなのかも知れない。でも、いまはただエルヴァのステアリングを握り、フルオープンでエグゾーストノートを堪能し、次のコーナーに集中する想像を楽しもう。そんな時間が、とても贅沢に感じられる1台だったんだな。

マクラーレン エルヴァ
●サイズ(全長×全幅×全高):未発表
●エンジン形式:V型8気筒DOHCツインターボ
●排気量:3994㏄
●最高出力:815PS
●車両価格:未発表

問い合わせ先/マクラーレン・オートモーティブ https://jp.cars.mclaren.com

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