酒飲み垂涎必至、煙の少ない魅惑の燻製器。

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    青野 豊・写真photographs by Yutaka Aono

    酒飲み垂涎必至、煙の少ない魅惑の燻製器。

    煙がほとんど出ない上に、手入れが簡単なのもポイントだ。実勢価格¥35,000

    酒飲みにとって〝自家製〞というのは魔力をもつ言葉だ。自家製塩辛、自家製ハム、自家製ベーコン……何やら、とっておきの感じがするではないか。なかでも燻製というのは最大級のイベントであり、多種多様な食材とチップの組み合わせで無限のオリジナリティを発揮できる楽しみとおいしさをもち合わせている。
    そんな燻製づくりを室内で可能にした夢の道具が、パナソニックの「スモーク&ロースター」だ。実はこれ、「マルチグリラー」という製品名、愛称を「けむらん亭」という名で長年愛されてきたロースターに燻製機能がついたもの。その名のとおり、除煙・脱臭機能に優れているのが大きな特徴だ。庫内ファンで煙を触媒フィルターへ誘導し、触媒専用ヒーターにより加熱された14層の触媒によって煙や油、においなどの有機物の酸化・分解を加速させ、無色・減臭の気体として排出させる仕組みになっている。この「煙らない、におわない」という製品特性を活かして、業界で初めて部屋の中での燻製づくりを可能にしたロースターを開発したというわけだ。 

    ここで燻製の手法を簡単におさらいすると、燻製時の温度によって熱燻、温燻、冷燻の3種類あり、低温になるほど時間がかかる反面、保存性は増す。スモーク&ロースターでは高温で短時間スモークする熱燻法を採用しているため、仕上がりはとてもジューシー。その分、保存性はなくなってしまうので、食べる分だけつくるのが正解だ。専用の容器に好みのチップを15グラムほど敷き、網の上に食材を置いてアルミ箔でふたをすれば準備完了。「くんせい」ボタンを押したら10分~20分程度でちょうどよい頃合いにスモークされる。容器に空いた2カ所の通気孔がポイントで、食材に煙をまとわせつつ、効率的に除煙・脱臭ができるようになっている。プロセスチーズでつくるスモークチーズもいいが、丸ごとのカマンベールチーズのスモークは絶品。熱々のとろけるカマンベールで1杯やったら、残りは冷やして食べるとまた違った味わいになる。ウイスキーオークのチップでつくる鶏のささみや、たくあんのスモークも乙なもの。ベランダや庭に出なくとも、煙やにおいを気にすることなくここまで完璧な燻製ができるのは驚きだ。

    レトロ感が漂うブラウンの本体も燻製器にふさわしく、愛着がわくこと請け合い。サンマや秋ナスもおいしい季節。小ぶりの鮭の切身もふっくら焼き上げる「切身」専用メニューもあり、さまざまな魚がひっくり返さなくてもお任せでプロ並みの焼き加減になる。グリルの汚れを気にして、魚を焼かないという家庭も多いようだが、これがあれば食の楽しみが広がるはずだ。

    燻製容器にチップを入れ、網の上に食材を載せて燻製させる。たとえばチーズだと12~17分ほどで出来上がり。

    神原サリー
    新聞社勤務を経て「家電コンシェルジュ」として独立し、豊富な知識と積極的な取材をもとに、独自の視点で情報を発信。2015年2月、表参道に「家電アトリエ」を開設。テレビ出演や執筆、コンサルティングなど幅広く活躍中。
    ※Pen本誌より転載