流線形のフォルムにセンターの分積算計を備えた、「H.モーザー」の斬新なクロノグラフ

  • 文:笠木恵司

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サブダイヤルがなく、ロジウムメッキを施したシルバーの針が分経過を表示するH.モーザーの新しいクロノグラフ。お馴染みのフュメダイヤルに、グリフェ仕上げを施している。自動巻き、ステンレス・スチールケース、ケース径42.3㎜、パワーリザーブ54時間、12気圧防水、世界限定100本。H.モーザー「ストリームライナー・フライバック クロノグラフ オートマティック」。¥5,280,000(税込、2月発売)

美しいグラデーションのフュメダイヤルで知られる「H.モーザー」から、これまでの同社のイメージを覆す斬新なクロノグラフが発表された。ブレスレットからデザインしたというフォルムは、1920〜30年代に初めて登場した高速列車にインスパイアされた流線形。このため、往時の高速列車の総称である「ストリームライナー」をモデル名にしている。なめらかなラインで造形された美麗なクッションケースに、複雑な曲面をもつ波形リンクを組み合わせたブレスレットを一体化。エレガントなスポーツモデルながらも、レトロなフューチャリズム(20世紀初頭の未来派デザイン)が感じられる独特の雰囲気が漂う。

5年の歳月をかけて完成したというだけに、クロノグラフも凝りに凝っている。普通はサブダイヤルで表示される分積算計をセンターに配置。ロジウムメッキを施したシルバーの針が外周の目盛り(内側)で分の経過を示すため、圧倒的に見やすい。外側の目盛りは秒で、赤い針が表示する。しかも、分積算計の針は1分ごとに正確にジャンプしていくため、その精緻な動きを見るだけでも心地いい。計測中でもリセットボタンを押せば、瞬時に分・秒のクロノ針がゼロ位置に戻ってリスタートできるフライバック機構も搭載。さらに、これらの機能はなんと水中でも操作可能というから驚く(12気圧防水)。

サファイアクリスタルでシースルーのケースバックにも発見がある。自動巻きにもかかわらずローターがまったく見えないのは、ダイヤルとムーブメントの間に巧妙に内蔵されているからだ。高級機特有のコラムホイールによる水平クラッチだが、ヤスリのような微小な歯をもつ特殊な歯車で連結するため、針飛びの怖れがない。

時分の目盛りがなく、12時位置に「60」とあるように「時刻も表示するクロノグラフ」をミニマルに追求。その一方で、得意のフュメダイヤルも進化。アンスラサイトグレーの色調にグリフェ仕上げ(仏語で「引っ掻く」の意味)を施して、サテン状のテクスチャーを加えている。手首にしっくりと馴染む心地良いケース&ブレスレットに、角形のプッシュボタンを左右対称に配置。リューズは手首を刺激しない4時位置へ。妥協を許さないこだわりを結集して誕生した、H.モーザーの新時代を告げる意欲的なモデルだ。

サファイアクリスタル製のケースバック。自動巻きローターをダイヤルとムーブメントの間に設置しているので、コラムホイールや歯車の動きを堪能できる。複雑ムーブメントの専門工房であるアジェノー社が開発。

クッションケースに独特のリンク(コマ)を持つブレスレットがなめらかに連なり、手首にぴたりとフィットする。ドーム型の風防がレトロモダンな雰囲気。

問い合わせ先/イースト・ジャパン TEL:03-6274-6120