気鋭のブランド「ゴリラ」が、日本人時計師と驚くべき低価格の複雑時計を開発。

  • 文:笠木恵司

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ゴリラ「ファストバックGT ドリフト」。スイスの老舗でデザイナーとして活躍したふたりが創設したブランドの最新作。3枚のディスクが回転しながら時間と分を表示するコンプリケーションウォッチ。開発には日本人時計師が関わっています。

セラミックやチタンはもちろん、軽量で強靭なフォージドカーボン(鍛造炭素)をミドルケースに用いるなど、先端素材を贅沢に使いながらも、10万~30万円台という信じられない価格帯でデビューした時計ブランド「ゴリラ」。この新進気鋭のブランドが初の複雑時計を発表しました。

ダイヤル上部に見えるのは、120度の扇形に配された分表示。その下を、時間表示のためのディスクが回転しながら通り過ぎていく仕組みです。上の写真は右側のディスクが9時を表示し終えたところで、左側のディスクが10時を表示しはじめています。このディスクは回転しながら右側に向けて少しずつ進み、分を指し示していきます。レトログラードのように針が戻るのでなく、3枚の時間表示ディスクがリレーして分も示していくといえば分かりやすいでしょうか。

この機構は17世紀につくられた回転ディスク式の置き時計「ワンダリングアワー」にインスパイアされたもので、開発にはスイスのヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエ社で開発担当副社長を務める日本人時計師、浜口尚大氏が参加しています。特殊な機構を発案して構造を合理化しているので、強度や信頼性も高く、省エネルギーを実現しています。また、機構部分を隠さず見せているため、たとえば時間ディスクの素材をアルミにしてレーザー彫金装飾を施すなど、パーツの素材やていねいな仕上げを楽しむことができます。
しかもこの複雑時計は、かつてなかったセンター秒針を備えています。秒針の軸がダイヤルの中心を貫通。下部の4番車と直結することで、これを実現しています。時計のベースカラーは艶のあるブラックで、目盛りはハイコントラストのホワイト。そこに真っ赤な長針が秒を刻んでいきます。考え抜かれたオリジナルの機構であり、使用している素材も多様で緻密な加工がされているため、世界250本限定というのも納得ですが、価格は税込みで62万6400円。驚異的なコストパフォーマンスというほかありません。

ゴリラは、オーデマ ピゲで活躍していたチーフ・アーティスティック・オフィサーと、シニアデザイナーが独立して2016年に設立されました。パワフルなブランド名は「創造的破壊型」の時計づくりを目指したネーミングです。昨年から日本市場に嬉しい”殴り込み“をかけていますが、装着感のよさも特筆に値するので、ぜひ店頭で腕に巻いて実感することをお薦めします。

「ドリフト」のケースバック。ムーブメントは「ETA2824-2」ですが、オリジナルの自動巻きローターを搭載。ブラックPVD加工を施し、レーザーでロゴを彫金しています。

フォージド・カーボン、チタン、セラミックなどを使用したケースも特徴的。ケース径44㎜、ケース厚14㎜、ラバーストラップ、100m防水、世界限定250本。¥626,400(税込)

問い合わせ先/G&Rジャパン

TEL:03-5422-8087