空気を抜いて、 大切な日本酒は華麗にキープ!

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    青野 豊・写真photographs by Yutaka Aono

    空気を抜いて、 大切な日本酒は華麗にキープ!

    空気を抜いている間は本体の上部が光り、真空具合が目で確認できる。実勢価格¥10,000

    デンソーといえば、自動車部品では世界でも有数の大手メーカーとして知られ、昨年末にはAIやIoTを活用した高度運転支援・自動運転の分野でNECと協業することも発表された。そんなデンソーが手がけた、飲みきれない日本酒を真空保存する「酒セーバー」が話題だ。

    始まりは、酒セーバーの登場より1年3カ月ほど遡って誕生した「ワインセーバー」。20年も前から同社ではワインセラーを製造・販売してきたという実績があり、顧客から「少しずつ何種類かのワインを飲みたい」「ひと晩では飲みきれない」などの声があったため、カーエアコンや車載用小型ポンプで培った技術を活用してワインセーバーを開発することになったのだ。その後、中栓を日本酒の四合瓶に合うように仕様変更し、本体デザインを和のテイストにしたのが今回の酒セーバー。日本酒もワインと同様に、空気中の酸素と触れることで味と香りが変化する。酸素が糖分とアミノ酸の結合による着色反応を促進させるため、しだいに褐変し、品質が劣化してしまうのだ。1回で飲みきれない場合には日本酒でも真空保存するのが望ましく、純米大吟醸など香りとコクにこだわる酒なら、なおさらだ。

    そんな酒セーバーは、大きさも形もT字型のワインの栓抜きとほぼ同じでコンパクト。真ん中からボトルの空気を吸い込んで、周囲からそれを排出するという仕組みを採用しているが、静音性を高めつつ、小型で高性能な真空ポンプを開発するのは大変だったとのこと。デザインありきの開発となったため、技術者の苦労はかなりのものだったと聞く。

    そのかいあって、仕上がりと使い勝手のよさは感動に値する。黒陶器色と青白磁色の2色を揃え、継ぎ目のない本体が美しく、手に馴染む、なめらかな手触り。付属の中栓をボトルに差し込み、本体を上からかぶせると同時に稼働し始め、完了すると自動で停止。真空にしている間は本体の上部がイエローに光るので、真空度が目で確認できるという〝見える化〞も実現させている。

    ほろ酔い気分でも、間違いなく使えるように配慮してスマートな操作を可能にしたという。同様の機能をもつ製品はほかにもあるが、使用中はボタンを押し続けなければならず、微妙な音の変化を聞きながら真空状態を推し量り、「もういいかな」と自分で運転を止めるという使い方が一般的なのだ。充電式でなく単3電池2本で動くので、手軽に使えるのもいい。パッケージのデザインがシックなので贈り物にも向く。

    今後もデンソーは、自動車部品から派生した技術を使ってさまざまな分野でチャレンジしていくという。次の一手が楽しみだ。


    ワインセーバーがステンレス調なのに対し、日本酒用はその雰囲気に合わせた黒陶器色(上)と青白磁色で展開。

    神原サリー
    新聞社勤務を経て「家電コンシェルジュ」として独立。豊富な知識と積極的な取材をもとに、独自の視点で情報を発信している。2016年、広尾に「家電アトリエ」を開設。テレビ出演や執筆、コンサルティングなど幅広く活躍中。
    ※Pen本誌より転載