最初から最後まで、デジタルで奏でる 画期的ヘッドホン
家電コンシェルジュ
concierge 麻倉怜士 Reiji Asakura
デジタルメディア評論家。1950年生まれ。デジタルシーン全般の動向を常に見据えている。巧みな感性評価にファン
も多い。近著に『高音質保証!麻倉式PCオーディオ(』アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略(』日経BP社)がある。

青野 豊・写真
photographs by Yutaka Aono
クラリオン ZH700FF
Clarion ZH700FF〈 フルデジタルサウンドヘッドホン〉

最初から最後まで、デジタルで奏でる 画期的ヘッドホン

これまでアナログに変換されていたスピーカーを、デジタルのまま駆動させる。実勢価格¥140,000

「ついに出たか」と感慨を抱いたのが、クラリオンのデジタルヘッドホン「ZH700FF」だ。ついにと思ったのは、これに採用された技術に5年前から注目していたのになかなか製品化されず、どうなっているのだと訝しげに見ていたから。 

技術はまったくブランニューだ。配信音源や、アンプ、プレーヤーなどの信号処理はとっくの昔にデジタルになっているが、スピーカーは「ラスト・デジタル・アイテム」。アナログ信号を入力し、マグネットとボイスコイルで振動板を動かすという駆動原理は、デジタル時代のいまでも100年前と変わらない。 

スピーカーにもデジタルを!と叫んだのが、オーディオ・ベンチャーのトライジェンスだ。デジタル信号をアナログに変換せず、デジタルのままスピーカーを直接駆動する技術開発に成功。元の音データを複数のデジタル信号に変換し、複数のコイルで振動板を駆動。音の大小に応じて動かすコイルの数を変える……という仕組みだ。画期的なデジタルスピーカー技術「Dnote」は多くのメーカーの注目を浴び、カーオーディオ専業のクラリオンは開発の最初期から応用を試みてきた。 

当初は単体スピーカーとして開発していたが、途中でヘッドホンに変更。ところが、この技術はちゃんとした音を出すのが難しく、なかなかいい音が得られない。私も節目ごとに聴いていたが、特に低域再現が難しかった記憶がある。それでも2014年秋頃にはかなり満足する音になっていた。その後、Dnoteを使った無線の卓上、天井スピーカーの商用化に踏み切っている。 

しかし、なかなか本命のデジタルヘッドホンは出てこない。実は、大きな課題に取り組んでいた。頭にバンドを被せ、耳を覆うヘッドホンでは、装着感覚が非常に重要だ。クラリオンは音の経験は豊富だが、ヘッドホンは初めてなので、装着のノウハウが皆無。そこで、いかに疲れさせず、長時間、音楽が聴けるかの装着の技術開発に基礎から取り組んだ。その成果として、フィット感と気密性を格段に上げることに成功。 

技術がデジタルなら、音も非常にデジタル的だ。つまり、音源のもっている音情報を最大限に表出させ、余計な響きをまったく出さない。これほど切れ味が鋭い音は聴いたことがない。音の立ち上がり、下がりがものすごく俊敏であり、シャープで鮮明な音調だ。一方で、コンサートホールの豊かな響きを堪能しようとすると、すぐに「余計な響き」が収束し、ドライなタッチになる。本機のデジタルストレートのよさを享受するなら、リズム感、テンポ感が鋭敏なロック、ジャズ、ラテン……などの尖鋭音源には抜群だ。個人的には1980年代のクロスオーバーをぜひ聴いてみたい。

最初から最後まで、デジタルで奏でる 画期的ヘッドホン

前後で角度が違う立体縫製仕上げのイヤーパッドの採用により、フィット感と気密性を格段に上げることに成功。

クラリオンお客様相談室 0120-112-140

※Pen本誌より転載
最初から最後まで、デジタルで奏でる 画期的ヘッドホン