新作は“東京ぐらしのカマロッティ”!? シボレー カマ...

東京車日記いっそこのままクルマれたい!

第66回 Chevrolet Camaro SS / シボレー カマロ SS

新作は“東京ぐらしのカマロッティ”!? シボレー カマロ SSは、現代アメリカを象徴する文句なしの大傑作!

構成・文:青木雄介

編集者。長距離で大型トレーラーを運転していたハードコア・ドライバー。フットボールとヒップホップとラリーが好きで、愛車は峠仕様の1992年製シボレー カマロ改。手に入れて11年、買い替え願望が片時も頭を離れたことはない。

インテリアデザインは、クーペの新機軸とも言える出来のよさ。さらに近未来感をきっちりとデザインしていて、文句なしにカッコいい! 加えて安定のボーズ・サウンドシステムで、ドアは低音を共鳴させる本気のウーファーボックスになっている。余談だけど、「カマロッティ」とは我が家のカマロの愛称です(笑)。

「アメリカ車が、東京で最も輝いていた時代はいつなのだろう」と考えると、戦後まもない1950年代にまでさかのぼります。そこからの30年間は東京というか、その周縁が熱かったんだよね。その時代とは横須賀、横浜、座間、福生の米軍基地と、それをつなぐ国道16号の存在が色濃かった時代のこと。沿道にはクルマで立ち寄れるダイナーがあり、基地周辺には軍の払い下げ品店やアメリカ兵向けの中古家具店、質屋が立ち並び、夜にはバーがネオンサインを輝かせる。そんな憧れのアメリカに最も近い場所が、国道16号でつながれていた。当時はヘインズのTシャツやリーバイスのジーンズと同様に、アメリカ車とは文化そのものだったんだよね。

今回、第6世代目となるカマロの6.2ℓ V8のOHVエンジンを走らせてみると、“アメリカ車は文化”という思いを新たにさせられたね。素晴らしいとしか言いようがない。オールアルミ化されたLS1エンジンを改良した、新世代のLT1エンジンを積んでいるんだけど、10年以上も2世代目のLT1エンジンを乗っている身からすれば、洗練の極みですよ。けれども確実に、アメリカ車の魂を残しているんだ。このOHVエンジンって、基本設計は60年前と変わってないのね。永遠のプッシュロッドで、ホットロッド。突然、猛烈に本気を出すじゃじゃ馬なエンジン特性や、凶暴な加速とともにV8のヴァイブレーションが狂おしく調和されていく、その様はまさにOHV。このエンジン、普段は静かだからこそ異様な凄みがあるんだよね。

乗り慣れない人にはクセの強さが気になるエンジンも、フレーム剛性を28%上げ、先代のモデルより90kgも軽くした、新しい骨格であるアルファ・アーキテクチャーに載せちゃえば、もはや走る現代アートだよ(笑)。軽量で強靭な骨格を得て、カマロは新たなアメリカ車の時代の到来を告げている。2ℓの直4ターボも乗ったけど、クセもないしコンバーチブルもあるし、普通によかった……。かつてはV8一択だったカマロが、他の選択肢ももてるようになったのは、GM(ゼネラルモーターズ)が世界的競争力を有する自動車メーカーに変わったことを示しているようにも思える。新CFO(最高財務責任者、副社長)に39歳のインド出身の女性を据えるとか、実際に猛烈なスピードで社内変革も行われているよね。

だからかはわからないけれど、新しいカマロは首都高だって楽しいし、明治通りや山手通りあたりも悪くない。自分のカマロで東京を走ると違和感しか覚えなかったんだけど(笑)、このコは違う。普通に代官山でオーガニックスムージーでも注文したくなる感覚があるんだよ(笑)。これはマジ。新しいカマロ SSは洗練されているって意味もあるけど、「これがアメリカだ」と主張し、強烈なフィジカルをビルトインする古典的な文脈にのっとりつつも、アイロニックで批判的な感性をももち合わせているからなんだ。アーティストにたとえると話題のマルチクリエイター、チャイルディッシュ・ガンビーノですよ。クルマの姿をしたスタイルであり、現代アメリカ的なアティチュード。それが徹頭徹尾、クールの流儀にかなっている。それでいて「魂は売らない」ってスタンスだから、基本はやっぱり熱いんですよ。

シボレー カマロ SS
●エンジン:6.2ℓ V型8気筒OHV
●出力:453PS
●トルク:617Nm
●トランスミッション:8速AT
●車両価格:¥6,458,400(税込)~

問い合わせ先:GMジャパン・カスタマーセンター フリーダイヤル
TEL:0120-711-276
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