そのV12エンジンは心で撃て!? アーマロイドなレディ...

東京車日記いっそこのままクルマれたい!

第72回 BMW M760Li xDrive / BMW M760Li xドライブ

そのV12エンジンは心で撃て!? アーマロイドなレディ、BMW M760Liで漆黒の宇宙空間を突き抜けろ。

構成・文:青木雄介

編集者。長距離で大型トレーラーを運転していたハードコア・ドライバー。フットボールとヒップホップとラリーが好きで、愛車は峠仕様の1992年製シボレー・カマロ改。手に入れて9年、買い替え願望が片時も頭を離れたことはない。

内装はBMWらしくフォーマルで、セレブというより要人系。外装も内装も目立たず、「ここぞ」という時に仕事をするエージェントって感じかな。同じV12で言うと、ベントレーと価格はほとんど変わらない。でもラグジュアリーとは別の視点に、M760Liの真価はあるのよ。

つい先日のこと、東京ミッドタウン前の交差点でBMWの7シリーズを見かけました。右折待ちしている、そのドライバーは女性。よくは見えなかったけどダーク系のスーツを着ていて、外資系企業の営業かコンサルタントかな、という雰囲気。大型サルーンの7シリーズを女性が運転している光景は、なかなかインパクトがあったんだ。「誰だろう? あのレディは」って感じ。その数日後、ハンドルを握った7シリーズのフラッグシップサルーン、M760Liにはさらに驚かされた。ちょっと想像を超えたエレガントさだったんだよね。BMWのMモデルが!?と思うでしょ。実際のところ7シリーズはぱっと見、ミドルクラスセダンの5シリーズと勘違いされることだってありえる。

しかし、その目立たなさも貞淑なレディの振る舞いだったとなれば、話は別ですよ(笑)。10日間ほどこのクルマに乗る機会を得て、いろんなところに行ったんだけど、まず街乗りなんかの“普段の走り”が素晴らしい。特にエコプロという省燃費に徹したモードがよくて、積極的に電気モーターを介入させてエンジンの回転を抑える走りなんだけど、賢者の沈黙よろしく独特の浮揚感があって気持ちがいい。特にアクセルオフからのニュートラル走行に格別の品のよさがあるんだ。静かでたおやかで、凪の海原を滑っていくヨットみたい。ヨットのオーナーが、船に理想の女性の名前を付けたりするでしょ!? マリリン号とか百恵号とか(笑)。あの気持ちになったよね。まぁ、イザベラでもダイアナでも、なんでもいいけどね。あははは。

きっちり走りたければ、BMWらしいアダプティブモードがお薦め。アクセル開度に合わせてエンジンのレスポンスからエアサスの固さまで、その走り方に合わせて自在に変えてくれる。このモードは臨機応変に仕事をこなすエージェントみたいで、すごく優秀。でもいつの間にか、百恵モードに戻しちゃうんだけどね(笑)。「帰りたい、あの港(モード)がある」って感じ!? 6.6ℓのV12エンジンは、さながら女神と形容すべきパワーを生み出す源泉なわけだけど、当然M760Liにはスポーツモードがあって、V12のバッジが伊達じゃないところが見たくなる。このエンジンはロールスロイスと共用しているから、スペックこそスーパースポーツ並みだけど、低速中速重視の王族的なエンジンなんだろうとたかをくくっていたところもあった。

実際、スポーツモードに入れても、普段の走りだといまひとつよさが感じられない。けれども深夜の高速道路となると、まったく話が違ってくるんだ。スポーツモードでアクセルを踏み込むと、男くさい低音のBMWらしいV型エンジンの音が響いてくる。見る見るうちに速度が上がっていき、車体はそこが本来の自分の場所であるかのように安定していく。普通じゃまず使わない速度域に、このスポーツモードの真価があるんだ。これってヨーロッパのアウトバーン仕様なのは間違いないんだけど、そこにおいてV12だったり、2500万円を超える車両価格だったり(地味目なエクステリアを含む)が全部つながった気がしたね。M760Liは寺沢武一のSFコミック『コブラ』に出てくるアーマロイド、レディって感じ。普段はクールで優秀、その仕草は至極のエレガンス。でも深夜のハイウェイでは戦闘力高しってね。なるほど、相棒にもしたくなるでしょ。

BMW M760Li xドライブ
●エンジン形式:6.6ℓ V型12気筒ツインターボ
●最高出力:610PS
●最大トルク:800Nm
●トランスミッション:8速AT
●車両本体価格:¥25,200,000(税込)~

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TEL:0120-269-437
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