BMW 3シリーズがフルモデルチェンジ! スポーツセダンの元祖が成し遂げた、進化するカーデザインとは。

  • 文:サトータケシ

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ひと目でBMWの3シリーズだとわかること、そしてそれがいままでにない新しい3シリーズだということ。「キドニー・グリル」とキャラクターラインの工夫で、このふたつを見事に両立した。

新しいBMW 3シリーズを担当したデザイナーは、やりがいとともに大きなプレッシャーを感じたのではないかと想像します。なぜなら1975年にデビューして以来、BMW 3シリーズはいつの時代もスポーツセダンのベンチマーク。累計で1500万台以上が販売されたといいますから、世界中にたくさんのファンが存在します。したがって、デザインから“3シリーズらしさ”が失われることは許されません。一方で人間は勝手なもので、目新しさがないと飽きてしまいます。

初代から数えて7代目、7年ぶりにフルモデルチェンジがなされた新型3シリーズを見て、担当デザイナーは難しいリクエストにしっかり応えたと感じました。3シリーズらしさと新しさが、見事に両立していたからです。

まずBMWのアイコンともいうべき、「キドニー・グリル」をご覧ください。余談ですがキドニーとは腎臓のことで、腎臓がふたつ並んだように見えるフロントグリルがBMWの伝統です。今回のモデルチェンジにあたり、伝統は踏襲しつつも、これまで2分割していたキドニーを一体化したのです。グリルの形状を左右の両端を吊り上げた複雑な多角形にしたこととあいまって、新鮮な顔つきになりました。注目すべきは、キドニー・グリルとヘッドライトをつなげたことです。このデザイン処理によって、新型3シリーズは寸法よりワイドに見えるのです。

ボディのサイドに目を移すと、前後のドアハンドルの上に鋭いラインが走っていることがわかります。「ズィッケ(Sicke、ドイツ語でひだの意)」と呼ばれるこのラインも、3シリーズの伝統です。ただし、前後のドアハンドルを貫通していた先代の3シリーズよりも位置が高くなりました。そしてズィッケの下には「ボーン・ライン」と呼ばれる、背骨を想起させる力強いラインが走ります。ポイントは、ズィッケとボーン・ラインの間隔を狭く(薄く)したことです。こうすることで、ボディ全体が薄く(低く)見えるのです。

エクステリアでもうひとつ注目したいのは、後ろのタイヤを包む膨らみの部分、いわゆるリアフェンダーです。ここが筋肉を思わせる抑揚のある造形になっており、さらにこの部分に光が当たって強調されるようなデザインになっています。BMW 3シリーズが後輪で地面を蹴る、FR(フロントエンジン後輪駆動)車であることを強くアピールしているのです。

キドニー・グリルやズィッケを工夫することで、クラシックな3シリーズらしさと最新のカーデザインを見事に両立させました。またいかにも安定して走りそうなロー&ワイドなフォルムと、ダイナミックに地面を蹴る後輪を際立たせることで、3シリーズの走りの質までも見事に表現しています。担当デザイナーには賞賛の拍手を贈りたいと思います。

実際にハンドルを握ると、新型3シリーズはスポーツカー顔負けの軽やかな身のこなしを味わうことができます。ミニバンやSUVなどスタイルが多様化しているいま、セダンに求められるのはスポーティな操縦性とカッコよさ。BMWの新型3シリーズは、現代にふさわしいプレミアムなスポーツセダンに仕上がりました。

ボディのサイドから後方にかけて回り込むようなデザインにすることで、ギュッと引き締まった印象となったリアビュー。凝縮された塊のような質感が、スポーティな走りを予感させる。

外観と同等かそれ以上に大きく変わったのが、モダンでハイテックな雰囲気のインテリア。タッチ式の液晶パネルを採用することでスイッチ類が減り、すっきりとした印象になった。

2分割されていたキドニー・グリルがつながったことで、ふたつのグリルの隙間が埋まった。このことにより、「シャーク・ノーズ」と呼ばれる尖った鼻先の形状がさらに強調された。

スポーティであると同時にプレミアムなモデルでもあるだけに、おもてなしも重要。ロックを解除するとウェルカム・ライトが足元を照らし、暗闇でも安心して歩を進められる。

BMW 330i M Sport

●サイズ(全長×全幅×全高):4715×1825×1430mm
●エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
●排気量:1998cc
●最高出力:258PS/5000rpm
●駆動方式:FR(フロントエンジン後輪駆動)
●車両価格:¥6,320,000(税込)

問い合わせ先/BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL:0120-269-437
www.bmw.co.jp