V12エンジンが奏でる永遠のメロディ。アストンマーティン至高のグランツアラー、ヴァンキッシュSにキミを乗せて。

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    東京車日記いっそこのままクルマれたい!

    第50回 Aston Martin Vanquish S / アストンマーティン ヴァンキッシュ S

    V12エンジンが奏でる永遠のメロディ。アストンマーティン至高のグランツアラー、ヴァンキッシュSにキミを乗せて。

    構成・文:青木雄介

    編集者。長距離で大型トレーラーを運転していたハードコア・ドライバー。フットボールとヒップホップとラリーが好きで、愛車は峠仕様の1992年製シボレー カマロ改。手に入れて11年、買い替え願望が片時も頭を離れたことはない。

    「ダーリンとふたりでフリーウェイをゆっくり流すの。アストンマーティンで音楽を聴きながら」というのはリック・ロスの「アストンマーティン・ミュージック」の一節。コレだよ、コレって感じだった(笑)。ヴァンキッシュ SのAVユニットはバング&オルフセンのハイエンドモデル。音楽もとことん楽しめるグランツアラー。イイよねぇ。

    これまで高級車ブランドが巨大メーカーの一員になることって、ほとんどいいことずくめに見えてました。というのも魅力的なクルマにするために莫大な開発費を投じて、車両にさまざまな付加価値をつけられるのって資金力のある巨大メーカーだからこそで、その後ろ盾なくして高級車は高級車たりえないのが現実。それは歓迎すべきことなんだけど、売るためのマーケティングが先に立って、ブランドのカリスマ性がスポイルされてるんじゃないの!?と彼は言うわけですよ。このアストンマーティンのヴァンキッシュ Sはね(笑)。あははは。

    とはいえアストンマーティンが完全なる独立不羈(どくりつふき)だったかというと、そういうわけでもなくて、かつてはジャガー同様にフォード傘下のPAGグループだったし、新車種のDB11はV8エンジンがAMG製だったり、これからはAMGとの協業も増えるだろう、という予感はある。しかし!このヴァンキッシュ Sは、ずっと独立不羈を貫いてきたメーカーであるかのような頑なさとカリスマ性があるんだ。ヴァンキッシュ Sに乗ると、向こう100年間も、アストンマーティンはヴァンキッシュにV12の自然吸気を搭載し続けるんじゃないかって気がしてくるんだ。V12エンジンは不朽のエンジンにして、永遠のメロディを奏でるんだよね。

    この6ℓのアストンマーティン製V12エンジンはとにかく素晴らしい! まさに間断なく続くエクスタシーですよ。静謐な空間に遠雷のように響き渡り続けるアイドリング音、アクセルを踏めば低くて乾ききったエキゾーストノートが、辺りを席巻するように響き渡る。その音による静と動のハーモニーにぞくぞくするんだ。握ると意外に華奢なハンドルからのインフォメーションは驚くほど明瞭で、さらに低中速域の足回りは絶品。本当に絶品で、しなやかに、吸いつくように路面のギャップをいなす。嗚呼、これぞリアル・グランツアラーと形容したいね! 逆に高速になればなるほどふわついてきて、スーパースポーツの速度を増せばいよいよ安定してくる足回りとは真逆なんだけど、常用域で完璧なんだから「全然いいや」って感じだよね(笑)。

    そしてこのスタイリング! もはやロングノーズ、ショートデッキのクーペスタイルのカリスマ的調和だよ(笑)。そこにカーボンの渋すぎるフロントスプリッターとリアディフューザーが付いて、エゴイストの雰囲気も漂わせる。こう書くと男性的かもしれないけれど、変な話、ハンドルを握っている間、「イギリスにこんな素敵なレディがいたとは」って驚きがずっとつきまとっていたんだな(笑)。グラマラスで包容力があって、とにかくエレガント。歴代のジェームズ・ボンドとパートナーのイメージでいうとティモシー・ダルトンかなぁ(ダニエル・クレイグはきっとDB11のV8だね)。たぶん使わないローンチコントロールや、効きの甘いトラクションコントロールもご愛嬌。後ろ盾のないアストンマーティンにしか奏でられない永遠のメロディは、このヴァンキッシュ Sにこそあるって確信させられたね。

    アストンマーティン ヴァンキッシュ S
    ●エンジン:6ℓ V型12気筒
    ●出力:588PS
    ●トルク:630Nm
    ●トランスミッション:8速オートマチック
    ●車両価格:¥34,579,982(税込)~

    ●問い合わせ先/アストンマーティン ジャパン
    TEL:03-5797-7281
    www.astonmartin.com/ja