潤う低温で 鮮度を保つ、 食材の理想郷。

  • 文:神原サリー

Share:

青野 豊・写真photographs by Yutaka Aono

潤う低温で 鮮度を保つ、 食材の理想郷。

スクエアなフォルムを強調し、設置スペースを変えずに大容量化を実現。「R-HW60」実勢価格¥340,000

冷蔵室がまるごと2℃になる冷蔵庫が日立から登場した。温度帯を言われてもよくわからない人が多いかもしれないが、これはつまり、「冷蔵室がまるごとチルドになる」という革命的な機能なのだ。

肉や魚などの生鮮食品はほとんどの人が冷蔵室下段に設けられた引き出し式の「チルドルーム」に入れているはずだが、ほかにもヨーグルトや納豆などの発酵食品やハム、チーズ、ソーセージなど、より鮮度を保って保存しておきたい食材は多い。ところがこのHWシリーズでは、冷蔵室を「うるおい低温冷蔵」モードにするだけで、チルドルームに変身してしまうのだ。ドアの開閉によって温度が上がりがちなドアポケットの牛乳も、キンキンに冷やしておきたい缶ビールも、どこに入れても冷たさを保つ。流行の「つくり置き」の料理や、デパ地下で調達してきた惣菜もぐんと長もちするのがうれしい。加えて下段には真空チルド室もあり、魚介類も挽き肉も密閉しながらさらに低い温度帯でしっかりと鮮度保持してくれる。しかも、消費電力量はこれまでより抑えられているというのだからあっぱれだ。 

さて、どうしてこんなことが可能になったのか。これまでは冷蔵庫全体をひとつの冷却器とファンで冷やしていたが、新モデルではマイナス約25℃になる冷凍室・野菜室用の冷却器のほかに、冷蔵室専用(こちらはマイナス約10℃)のものを備えた冷蔵室独立冷却システムを導入。無駄なエネルギーを使うことなく、しかも除湿量を抑え、水分を含んだ冷気を大風量のファンで冷蔵室に送ることができるようになったのだ。 

大容量の冷凍室内は3段式になっていて、整理しやすいのもいい。薄型の上段の引き出しにはアルミトレイが敷かれ、専用センサーで温度を検知して自動で急冷運転に切り替えるなど、ホームフリージング機能にも優れる。炭酸ガスの効果で眠らせるように保存して鮮度を保つ野菜室では、7日後の葉物野菜もしゃっきりしてみずみずしい。いずれの引き出しも底面にはダイヤモンドカットされたようなデザインが施されていて、開けるたびにキラキラと反射して心躍る気持ちにさせられる。 

また、日立の冷蔵庫といえば本体両サイドのバーが印象的なデザインだったが、それを刷新し、すっきりとしたスクエアなフォルムを強調。ただし、冷蔵室ドアを開けたときにドア角部が外側へ大きく出っ張るのを抑えている日立ならではの仕様は従来どおり。壁際に設置する際にすきまを開ける必要がないので、大きな利点なのだ。もうひとつ、設置スペースを変えずに大容量化を図っているところも見逃せない。 

毎日使うものだから不満なく快適に使えるものを選びたい。10年、幸せが約束される一台だ。

約0・8気圧の真空環境で密閉保存ができるチルド室。ラップなしでも、食品の酸化と乾燥が抑えられる

神原サリー
新聞社勤務を経て「家電コンシェルジュ」として独立。豊富な知識と積極的な取材をもとに、独自の視点で情報を発信している。2016年、広尾に「家電アトリエ」を開設。テレビ出演や執筆、コンサルティングなど幅広く活躍中。
※Pen本誌より転載