ソフトウエアで理想の画をつくる、傑作スマホカメラ
青野 豊・写真
photographs by Yutaka Aono

ソフトウエアで理想の画をつくる、傑作スマホカメラ

5.7インチディスプレイ(¥89,980~)と、写真の6.3インチディスプレイ(¥116,600~)の2サイズを展開。

アンドロイドのスマホは、これまでたくさん使ってきたが、そのOSの開発元である本家がつくるとこれほどのものができるのかと驚いた。「コンピューテーショナルフォトグラフィー」による華麗な写真術のことだ。スマホはこれまで先輩格のデジタルカメラから、撮影や絵づくりの技術、ノウハウを導入し、スマホづくりに業界挙げて励んできたが、Pixel 4は独自のソフトウエア処理で、光学カメラの延長にはないカメラ技術を仕込んだ。
「コンピューテーショナルフォトグラフィー」とは、コンピュータによる写真撮影だ。レンズからの光をCMOSセンサーで取り込んで電気信号にするまでは同じだが、そこから強力なソフトウエアにて従来にはない映像処理を可能にする。
その出発点はふたつのレンズ。35mm換算で約27mm相当の広角レンズと43㎜相当の中望遠レンズの2カメラを、ソフトウエア的に「ひとつのカメラ」として連動運用する。コンピューテーショナルフォトグラフィーでは、光はデータである。その情報をコンピュータ内で瞬時に分析、加工、レンダリングし、目的の映像を生成する。ふたつのカメラが同時に9枚の画像を撮影し、絞りや、シャッタースピード、色情報などをさまざまに変化させた9枚から瞬時に“いいとこ取り”して、AIも加わり加工するのだ。
撮影時にリアルタイムで、HDR処理後の画像が画面上で確認できる「Live HDR+」は、ワン・アンド・オンリーだ。これを見ると逆光でも画面では暗部の階調が与えられていることがわかる。Pixel 4の内部で、階調が引き出されたわけだ。
暗部と明部が別々に制御できる「デュアル露出補正」も便利。一軸の調整では、画面全体の輝度を一律に変えるので、暗部を上げると空の雲が白飛びしたり、またその逆もあるのだが、これは、ふたつのスライダーで明暗を独立コントロールできるので、白飛びを起こさずに暗部階調を出すことが可能だ。
コンピューテーショナルフォトグラフィーは、デジタルズームも正す。デジタルズームは電気的に拡大するわけで、どうしても解像度が落ちる。しかしPixel 4では、驚くほど精密だ。秘密が「ブレ超解像」。手で持つ限り手振れは必ず発生する。しかし、ここではそれは悪ではなく、「善」なのだ。ブレがあるから、その都度、違う光情報が得られるわけで、それらを合算処理すれば、よりたくさんの画像情報量が獲得できる──という発想だ。
カメラ以外にも、ジェスチャー操作、リアルタイム文字起こしなどの機能をもち、今後、使用が解禁される。さすがグーグルの実力を見せつけた画期的なスマホだ。



ソフトウエアで理想の画をつくる、傑作スマホカメラ

左右に並ぶ、広角レンズと中望遠レンズ。ふたつのレンズを組み合わせることで、理想の画をつくり出す。

麻倉怜士
デジタルメディア評論家。1950年生まれ。デジタルシーン全般の動向を常に見据えている。巧みな感性評価にファンも多い。近著に『高音質保証!麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)がある。
※Pen本誌より転載
ソフトウエアで理想の画をつくる、傑作スマホカメラ