ギターアンプを彷彿させる、力強いサウンド

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    青野 豊・写真photographs by Yutaka Aono

    ギターアンプを彷彿させる、力強いサウンド

    ギターアンプにインスパイアされたという、レトロなデザインがいい。市場想定価格¥48,400

    いま、ブルートゥース・スピーカーは、オーディオ・シーンの最もホットなエリアだ。オーディオ、IT、通信と、多方面から参入が続いている。なかにはワン・アンド・オンリーの愉しい製品もある。フェンダーの「MONTEREYTWEED」(モントレーツイード)はその好例だ。  
    フェンダーとはあの有名なアメリカのエレクトリックギター/ギターアンプメーカー。ある分野で絶対的なハイイメージをもつブランドは、その令名を隣接分野でも輝かせることが可能になる。そこで、同社はかつて一世を風靡したアンプのデザインモチーフを流用した。
    「ツイード」とは、1950年代にヒットした同社最初期のアンプシリーズだ。旅行カバンの素材、ツイードを外装に採用したことからそう呼ばれた。アンプメーカーとしてのフェンダーの名声を確立させた重要なモデルだ。そのオリジナルデザインを細部にまで踏襲したのが、モントレーツイードである。「モントレー」の名前も、ジミ・ヘンドリックスやサイモン&ガーファンクルなどが出演した伝説のロックフェスティバルからいただいている。つまりオーディオメーカーという再生側からの「この音はいい」というアプローチではなく、音源側からの演奏イメージを強く打ち出すネーミングだ。  
    ディテールも、ツイードを踏襲。フロントグリルやコントロール部のボリューム、トレブル、ベースの調整ダイヤル、ジュエルランプなどに、ツイードのデザインエレメントが採用されている。まるで、本物のツイードの小型ディフュージョンから音が再生されるような気がする。音源機器はブルートゥース接続のスマホや携帯プレーヤーが想定されているが、上部の操作面にはそれらとアナログで接続できるよう、ステレオミニジャック端子も装備されている。これは、ギターアンプには必ずあるシールド端子のメタファー。スピーカーはフルレンジ2、ウーファー2の陣容だ。  
    注目は音。剛毅で、大スケールなのである。ブルートゥースだから圧縮音声なのだが、音に縮こまったところがない。堂々と大音量で押し出す迫力だ。エリック・クラプトン『いとしのレイラ』を聴く。低音の量感は、意外なほど大きい。少し締まりが足りない部分はあるが、ブースト感に乗り、剛性の高いピラミッド的な正三角形の周波数特性だ。ベースの音階が明快に再現され、ドラムスの打ちもどっしりと再現される。
    これを聴くと、やはりロックは低音だと改めて思う。エレクトリックギターのディストーションやファズなどの歪み系音色の再現もリアルだ。ボーカルはくっきりと輪郭を描き、明確で力感のあふれた音調。ロック、ポップスファンにぜひ聴いてほしいスピーカーだ。

    ボリューム、トレブル(高音域)、ベースの調整ができるコントロール部も、アンプのようなアナログ感。

    麻倉怜士
    デジタルメディア評論家。1950年生まれ。デジタルシーン全般の動向を常に見据えている。巧みな感性評価にファンも多い。近著に『高音質保証!麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)がある。
    ※Pen本誌より転載