名店「バッハ」の豊かな味と技を、まるごと再現。

  • 文:神原サリー

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青野 豊・写真photographs by Yutaka Aono

名店「バッハ」の豊かな味と技を、まるごと再現。

挽かれた豆が落ち、湯が注がれドリップされる。その優雅な様子が目にも楽しい。実勢価格¥37,800

ツインバードの全自動コーヒーメーカーが掲げる“味わいのゴール”は、自家焙煎珈琲の老舗「カフェ・バッハ」の店主を務める田口護氏の技を再現することだった。コーヒー界のレジェンドといわれる田口氏いわく、日本を含めたアジア人たちはコクの中にも酸味がかすかに感じられる繊細な味わいを好むという。
そんなアジアの人々に向けたおいしいコーヒーを淹れるための基本は、「粒度を揃え、抽出温度を83度にする」こと。そこで地元・燕三条地域でつくられたステンレス刃を採用した独自設計の着脱式低速臼式ミルを開発。湯温の設定も83度と、苦みがたつ90度のふたつから選べるようにして、田口氏の教えを忠実に守った一台を完成させたのだ。  
実際にコーヒーを淹れてみよう。サーバーで計量した水をタンクに注いだら、ドリッパーにペーパーフィルターをセットし、サーバーにのせて本体に。続いて豆を入れるのだが、同梱されているのは計量スプーンではなく、深・中・浅と豆の煎り方に応じて3カップまで量れる計量カップというところにもこだわりを感じさせる。中煎りで2カップ分抽出する時の豆は約24gとやや多めだ。挽き目は粗挽き・中挽き・細挽きから選べるが、お薦めの中挽きに設定する。 抽出温度を83度に設定、蒸らし湯量ダイヤルで2カップを選んだらスタートボタンを押す。モーターの回転音とともに、豆がゆるやかに挽かれていくのがわかる。摩擦熱が出にくいように配慮されたというだけあって、音は比較的静かでゆったりとしている。挽き残しを避けるべく作動時間が設計されているため、2杯分の豆でもかなり長くミルのモーター音が響くのはご愛嬌。やがて蒸らしの工程に。豆の香りが部屋中に広がって幸せな気分になる。  
そして最大の見せ場となるのが、ドリップだ。シャワー噴出口とドリッパーとの間に約2cmのすき間があるため、ドリップの様子を眺める楽しさがあるのがいい。シャワーは、ハンドドリップのように断続的に6方向から噴出。フィルター内側の粉の壁を壊さないよう、湯は内向きに注がれる。抽出するカップ数によってシャワーの湯量を調節することで、余分な雑味や苦みは出ないようにすることができるのだという。  
カップに注いで、まずはコーヒーのアロマを吸い込み、口に含む。実はずいぶん前に南千住を取材し「カフェ・バッハ」も訪れたことがあるが、その時に目の前で淹れてくれたあのコーヒーの香りとコクのある味わいが、確かにここにある。  
マットなブラックで、横幅がスリムなスタイリッシュなデザイン。粉が周囲に飛び散るのを防ぐため除電レバーを付けるなど、細部まで美しいプロダクトだ。

ドリップシャワー噴出口とドリッパーとの間にあえてすき間を設け、ドリップの様子が楽しめるように。

神原サリー
新聞社勤務を経て「家電コンシェルジュ」として独立。豊富な知識と積極的な取材をもとに、独自の視点で情報を発信している。2016年、広尾に「家電アトリエ」を開設。テレビ出演や執筆、コンサルティングなど幅広く活躍中。
※Pen本誌より転載