ガラスの一枚板、その上で披露する華麗なる調理術。

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    青野 豊・写真photographs by Yutaka Aono

    ガラスの一枚板、その上で披露する華麗なる調理術。

    ダブルオールメタル対応の「M350T」シリーズ。写真の75㎝幅(¥515,900 )と60㎝幅(¥493,900 )とがある。

    日立の調理家電といえば、オーブンレンジを筆頭に炊飯器まで、他のカラバリが揃ってはいても「日立レッド」と称されるやや明るめの鮮やかな赤色が特徴的だった。それが今年、赤が姿を消した。そもそもデザインへの視点が大きく変化したのだ。同社は「Less but Seductive(一見控えめなれど、人を魅了するモノのありよう)」を新たなコンセプトに掲げ、デザイン改革をしていくと宣言している。
    取っ手が本体と一体化し、クールでスタイリッシュな佇まいを見せるオーブンレンジ、スクエアなフォルムとマットなブラックがキッチンにしっくりと収まる炊飯器、そしてまるで一枚のガラスのようなIHクッキングヒーター。これらの新しい3製品は、揃って2019年のグッドデザイン賞を受賞している。
     IHクッキングヒーターは、キッチンカウンターに馴染むようにと上面奥の後ろフレームを排除し、とことんガラスだけでつくりあげられた。注意書きの文言を排気口の向こう側のガラス部分にもっていくなど、デザインへのこだわりは「Less but Seductive」そのもの。外周をプレートと同色の薄型のフレームで囲んであるため、フラットな仕上がりになっていて拭き掃除もしやすい。
    毎日の料理が少しでも楽しく、使う人を魅了するものであるようにと、機能面での進化も抜かりない。付属の平皿と専用蓋を使って、肉じゃがや筑前煮、八宝菜などをつくれる「水なし調理」ができるようになり、人気の“ほったらかし調理”をグリル部分で可能にしている。食材がもつ水分と調味料だけでつくる料理は、素材の味が引き出されて旨味がたっぷりだ。また、冷凍の塩サバや塩鮭など魚調理も、解凍せずにそのまま焼けるメニューが加わり、手間も時間も短縮されている。
    もうひとつ、忘れてはならないのはアプリ専用の「適温調理サポート」レシピが30種類加わったことだろう。適温調理とは、メニューを選んで設定すればフライパンや鍋の温度を自動でキープしてくれるもので、手動では難しい火加減の調整がいらないという日立IHのお家芸ともいえる便利機能。光センサーと温度センサーにより加熱も予熱もコントロールできる独自技術で、このIHのネーミング「火加減マイスター」の由来でもあるのだ。
    そんな適温調理は、専用アプリと連携し、予熱や食材を入れるタイミング、次の工程に進むタイミングなどを音声でサポートしてくれ、初めてのメニューでも失敗がない。アプリで献立を決めたり、設定をスマホから転送するだけでなく、グリル使用時に調理終了の合図をプッシュ通知でスマホに知らせてくれる機能もある。今後、順次、新しいレシピが増えていくのも楽しみだ。

    グリルで使える波皿(写真)と平皿も付属する。ノンフライ調理や過熱水蒸気調理、オーブン調理などが可能。

    神原サリー
    新聞社勤務を経て「家電コンシェルジュ」として独立。豊富な知識と積極的な取材をもとに、独自の視点で情報を発信している。2016年、広尾に「家電アトリエ」を開設。テレビ出演や執筆、コンサルティングなど幅広く活躍中。
    ※Pen本誌より転載