超人ハルクなトルクの愉楽!? 新型X5で、走る喜びも“マトリックス”に。

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    東京車日記いっそこのままクルマれたい!

    第97回 BMW X5 xDRIVE35d M SPORT / BMW X5 xドライブ35d Mスポーツ

    超人ハルクなトルクの愉楽!? 新型X5で、走る喜びも“マトリックス”に。

    構成・文:青木雄介

    編集者。長距離で大型トレーラーを運転していたハードコア・ドライバー。フットボールとヒップホップとラリーが好きで、愛車は峠仕様の1992年製シボレー カマロ改。手に入れて11年、買い替え願望が片時も頭を離れたことはない。

    国内モデルとしては初となる、ハンズオフ機能付きの渋滞運転支援システムを導入。

    BMWの新型X5で日帰りの奈良出張、さらには紅葉が綺麗に色づく飛騨山脈南端の乗鞍岳にキャンプに行ってきた。その距離ざっと1500km強。結論から言うと、3Lの直列6気筒ディーゼルはより強力かつスムーズになり、さらに長距離運転をものともしないグランツアラーの性格を強めてきたってことなんだ。試乗したのはオプションの3列シートでエアサス仕様。そもそも先代のX5がもっていたディーゼルエンジンのポテンシャルの高さに、扱いやすさや乗り心地といった走りのすべてが進化している。ある意味、模範的な進化とも言え、プレミアムセグメントの輸入SUVではいちばん売れているX5だけに、「なるほど」と頷かされることしきりだったんだ。
    たとえばデビュー作が個性的なハマり役で大ヒットした俳優が、円熟味を増し、オールラウンダー的な性格を強めていく過程ってあるでしょ。いわゆるスター俳優が、どう大物俳優になっていくか。その道筋で俳優が、どんな監督の作品で、どんなキャラクターを演じるかという選択が重要なように、クルマだってどのような進化を選ぶのかっていう選択が重要になってくる。
    たとえるならキアヌ・リーブスかな。映画『ジョン・ウィック』シリーズをライフワークにしてから、ますます目が離せない俳優になってるでしょ。影のある役どころを人生の痛みとともに演じながらも、自分の進むべきキャラクターやイメージをちゃんとコントロールしている。で、その本領って、やっぱりスタイリッシュなアクションなわけ。X5で言うなら断然走り。さらにBMWで言えばエンジンそのものなんですよ。

    高級SUVの代名詞、X5が目指すところとは。

    じゃあ「そのいちばん肝心なエンジンってどうなの?」ってことなんだけど、そもそも直列6気筒エンジンはディーゼルとの相性も抜群で、鋭く立ち上がり、強力なトルクでぐいぐい走る特別なエンジンフィールがあり、震動も抑えやすい。余談だけど現在、街を走る静音設計の大型トラックはほぼすべて直列6気筒エンジンだし、さらに言えば荷重が最大でも、坂を上がる際にもりもり下から湧き上がってくる独特のトルク感が魅力なんだ。これがないと「垂れ」という現象を引き起こし、坂を登っているのに、逆に坂に引っ張られるような錯覚を起こすんだけど、今回は図らずも、そんな直列6気筒ディーゼルの長所が、最も顕著に感じられた瞬間があったんだ。
    新型X5は、乗鞍岳のキャンプ場に向かう上り勾配35%はあるだろう、つづら折りのヒルクライムを、大人6人を乗せてきわめて鋭く、こともなげに登ったんだな。シフトダウンするのでも、回転数を上げるのでもなく、街中で普通に使っているトルクが、険しい急坂でも余裕で通用する感じでね。最大トルク620Nmを誇る、超人ハルクのなせる業(笑)。そのさりげなさは、キアヌ・リーブスのガンアクションって感じ。この鋭く、強大なトルクを扱うトランスミッションもより洗練されているし、走り出しのノッキングもほぼ皆無。ワインディングはお手のもので、余裕のストロークが効いた足まわりでロールをきっちり抑え、悶絶するほど気持ちよく走る。
    この圧倒的な気持ちよさも、もちろんトルクの強力さによるところが大きいんだけど、ディーゼルのX5を乗り継ぐ人の理由でもあるんだな。他のSUVでは味わえないからね。ガソリン車でツインチャージャーやターボで数値を高めたとして、このガツンとしたトルクはどうにも得られないはず。むろんグランツアラーとして長距離も完璧で、高速走行ではディーゼルとは思えないぐらいに胸のすく走りを約束してくれる。それも間断なく続く“トルクの愉楽”って感じの走りだから、BMWのX5が目指すところが明確に見えてくるよね。
    車体も大きくなり、威風堂々。昨今のBMWのトレンドに倣ってフロントグリルが大型化し、より押し出しが強いデザインになった。3列シートも選べて死角なし。ただ3列目をよく使いたい人は、上位グレードのX7のほうがいいかも。子どもたちのサッカーの送り迎えぐらいなら十分だけどね。キャンプに行くなら最高の一台。でも大人が乗るなら、4人がベストなSUVだね。

    • キドニーグリルの大型化により迫力が増したフロントフェイス。

    • 飽きのこないシンプルなインテリア。

    • X5の高級感を演出するクリスタルガラス製のシフトノブ。

    • シャシーはX7と共有してフルサイズとなった。

    • 後部2席は液晶ディスプレイを配し、エンターテインメント性を充実。

    • 直近50ⅿのルートを記憶し、自動で後退できるリバースアシスト機能を搭載する。

    ●サイズ(全長×全幅×全高):4935×2005×1770㎜
    ●エンジン形式:直列6気筒DOHCディーゼル
    ●排気量:2992㏄
    ●最高出力:265PS/4000rpm
    ●駆動方式:4WD(フロントエンジン4輪駆動)
    ●車両価格:¥10,318,000(税込)

    問い合わせ先/BMWカスタマー・インタラクション・センター
    TEL:0120-269-437
    www.bmw.co.jp