あの時のレクサス クーペを思い出させて!?  『マイアミ・バイス』に、LC500を登場させるなら。

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    東京車日記いっそこのままクルマれたい!

    第96回 LEXUS LC500 / レクサス LC500

    あの時のレクサス クーペを思い出させて!?  『マイアミ・バイス』に、LC500を登場させるなら。

    構成・文:青木雄介

    編集者。長距離で大型トレーラーを運転していたハードコア・ドライバー。フットボールとヒップホップとラリーが好きで、愛車は峠仕様の1992年製シボレー カマロ改。手に入れて11年、買い替え願望が片時も頭を離れたことはない。

    ノーズからルーフへの優雅なラインが象徴的なクーペボディ。

    今回、アメリカのマイアミで、レクサスのLC500をサーキットと一般道の両方で試乗する機会を得た。マイアミでクルマと言えば、TVドラマシリーズ『特捜刑事マイアミ・バイス』で主人公のジェームズ・ソニー・クロケットが乗ってたフェラーリのデイトナ スパイダーか、テスタロッサが真っ先に思い浮かぶ。カーカスタムも人気で、超大径ホイールに超扁平タイヤを装着してリフトアップするマイアミスタイル(変態)の本場でもある。いずれにしてもマイアミはモータースポーツの聖地、デイトナビーチもすぐ近くだし、アメリカ車文化のホットスポットなんだな。
    実際、市内を貫く幹線道路の95号線を流していると、世界のほぼあらゆる自動車メーカーのクルマがまんべんなく走っていて、その多様性に感動させられるんだ。レクサスも例外ではなく、高級メーカーとしてメルセデス・ベンツの向こうを張りつつ、数の多さという意味では国産のキャデラックやリンカーンもしのぐ存在感だった。個人的にも「レクサスはアメリカのブランドだ」というのが、14年前に日本に上陸した時以来の感覚としてある。
    そんなマイアミでレクサスのクーペ、LC500に乗ってみると、自慢の自然吸気のV8エンジンがサーキットでも街中でもホント「最高!」なんだな。このV8エンジンはドロドロと不規則なOHV由来の雑味がなく、よく回り、高回転時のクリアな抜け感が素晴らしいエンジン。むろんフロリダの青い空とパームツリーによく合っているわけだけど(笑)、制御する10段のダイレクトシフトATがホントよく出来ている。2t弱のボディを動かすのに、重量を感じさせることなく、あらゆる速度域で間断なく必要なだけトルクを引き出していく。サーキットで走ればよくわかるんだけど、走り込んだ分だけシフトワークに反映されている印象だね。さりげなくて、でも隙がない。
    ステアリングもとても素直なので、サーキットでも片手で操作し、もう片手は添えるぐらいでちょうどいい。挙動の把握がしやすいからか、一周走るとエイペックスの位置が自然に記憶され、取るべきラインもよく見える。結果、ものすごく運転が上手くなった気にさせてくれるクーペでもある。そもそもLC500はすごく運転しやすくて、カジュアルな高級スポーツクーペとして乗り手を選ばないしね。

    マイアミにもよく似合う、日本発のスポーツクーペ

    インテリアも本当によくデザインされている。シートひとつとっても形状を豊かにするために、丹念に裁断した革材をていねいなステッチでつなぎ合わせているのね。インテリア全体としては表革でやわらかい造形をつくり、裏革材のアルカンターラで陰影を表現。特に美しいベゼルレスハンドルとドアトリムパネルのスリックデザインは、「ここまでやるか」と唸らされるし、エクステリアとインテリアの連続したコンセプトを納得させる決め台詞として、十分なインパクトをもっている。中に入ったらイマイチ……、というのは高級スポーツカーにはよくあることだけど、LC500は確実に乗り手の期待値を超えてくるんだ。
    こういう誰が見てもわかる、細かくて気の利いた仕事をやり込む。これがレクサスのよさであり、アメリカでの評価でもあるんだ。レクサスはアメリカ国内においてはあくまでも日本車という認識であり、同時に先進性と日本の職人技が際立つ高級ブランドとして評価されている。LC500は憧れのスポーツクーペとして、そういうレクサス観を牽引していく存在でもあるんだな。たとえば大ヒットしたR&Bシンガー、R・ケリーの「イグニッション」の歌詞でメタファーに使われる、レクサスのクーペみたいにね。
    そんなマイアミの95号線を走っていた時、一番左のレーンを疾走していくソニックシルバーのLC500を見かけた。ハッとするほどカッコよくて、思わず視界から消えるまで見送ってしまった。その時に思ったのは、これが『マイアミ・バイス』のワンシーンなら、ソニーの相棒のリカルド・タブスのクルマにぴったりということだった。知的でクール、かつ品があってスタイリッシュな“マイアミのリコ”にこそLC500はふさわしい。これはアメリカのみならず世界におけるレクサスのポジションでもあるけど、日本では見慣れてしまったスピンドルグリルのフロントフェイスが、まったく違って見えた瞬間でもあったんだ。

    • コンセプトカーをほぼ忠実に再現した技術力が高く評価された。

    • メープル色を基調としたインテリアは北米で人気の仕様。

    • 刀のように見えるCピラーが特徴的なサイドビュー。

    • 思わず触れたくなるような美しい丸みを帯びたシフトノブ。

    • 低重心で操作性に優れたフロントミッドシップを実現。

    • 自然吸気のV8エンジンは世界的に見ても希少な存在だ。

    ●サイズ(全長×全幅×全高):4770×1920×1345㎜
    ●エンジン形式:V型8気筒DOHCエンジン
    ●排気量:4968㏄
    ●最高出力:477PS/7100rpm
    ●駆動方式:FR(フロントエンジン後輪駆動)
    ●車両価格:¥13,263,148(税込)

    問い合わせ先/レクサスインフォメーションデスク
    TEL:0800-500-5577
    https://lexus.jp