家庭のニオイに 睨みをきかせる、 壁かけ脱臭機。

    Share:

    青野 豊・写真photographs by Yutaka Aono

    家庭のニオイに 睨みをきかせる、 壁かけ脱臭機。

    これまでにない壁かけというスタイル。3.3kgという軽さで、壁への負担も少ない。実勢価格¥60,000(税込)

    高気密高断熱の住宅が増え、窓を開けない家庭が多くなってきたいま、室内の空気浄化に注目が集まっている。特にカビや細菌・ウイルスなどの有害物質やこもりがちなニオイへの対策は重要課題だといえる。フィルターにチリやホコリを吸着させる空気清浄機ではなく、光触媒による空間除菌・脱臭機という新たな切り口で攻め込むのが、カルテックの「ターンド・ケイ」だ。
    カルテックを立ち上げたのは、シャープに約30年勤務していた技術者の染井潤一。大学時代から光触媒を研究しており、シャープでもこの光触媒の技術を使った製品を開発したいと思っていたという。だが当時、シャープではプラズマクラスターに力を入れており、除菌や脱臭という点で方向性が重なり、日の目を見ることがなかった。そんな彼が意を決して、思いを同じくする仲間とともに2018年4月に独立。ルチル型柱状結晶の採用で世界ナンバーワンの反応効率を実現させた光触媒を材料メーカーと共同開発し、独自の機構設計で光量・風量・センシングをコントロールする壁かけタイプの除菌・脱臭機「KL−W01」を完成させたのだ。
    大きく厚みのある本体など、昨今の家電は目障りになるものが多いとして、同社がこだわるのは空間に馴染む“ノイズレスデザイン”。だからこその壁かけタイプというわけなのだが、これを可能にしているのは特許を取得した「サイドフロー構造」のなせる技だ。ファンによって本体内に吸い込まれた汚れた空気がLED照射された光触媒フィルターを通るだけで強力に酸化分解される仕組みで、他社で使用しているような吸着フィルターは必要ない。
    それにより本体の厚さは88mmと薄型で、石こうボード仕様の壁にも設置できる3.3kgという軽さを実現させた。床に平行に取り付けられるようにと水準器付きのボードを同梱し、電源コードを隠すためのホワイトのモール(50cmを3本)も用意されており、壁かけをサポートする細やかな配慮も行き届いている。
    我が家のリビングダイニングで実際に使用してみると、オーブンレンジや煮込み鍋などの調理家電使用後のニオイが速やかに消えるだけでなく、これまで帰宅時になんとなく気になっていたニオイもきれいになくなって清々しく感じられる。なだらかな曲線を描くホワイトの本体の質感が美しく、ノイズレスというよりインテリアとして部屋のアクセントになっている。お手入れは、汚れの頻度に応じてフィルターをぬるま湯に浸けておくだけでOKという手軽さもうれしい。
    世の中をひっくり返すという意味をもって付けられたというターンド・ケイの名の通り、新しいジャンルとして期待できる。

    フィルターは側面からワンタッチで取り出すことができ、掃除はぬるま湯に浸けおきするだけでOK。

    神原サリー
    新聞社勤務を経て「家電コンシェルジュ」として独立。豊富な知識と積極的な取材をもとに、独自の視点で情報を発信している。2016年、広尾に「家電アトリエ」を開設。テレビ出演や執筆、コンサルティングなど幅広く活躍中。
    ※Pen本誌より転載