ヘミングウェイも愛した、極上の角と丸を品定め。

  • 文:並木浩一
  • 写真:宇田川 淳

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両天秤の腕時計
文:並木浩一 写真:宇田川 淳

ヘミングウェイも愛した、極上の角と丸を品定め。

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CUERVO Y SOBRINOS
クエルボ・イ・ソブリノス

時代物のバーカウンターでモヒートと極太の葉巻を楽しむときに、着けていたい腕時計はどこにあるだろうか。ヘミングウェイのファンが食いついてきそうなトリビアの、有力な回答がクエルボ・イ・ソブリノスだ。明快なフォルムとディテール、強弱の効いたコントラスト。南国の昼下がりでも夜更けのマンハッタンでも、本物のチーク材のカウンターには絶対的に映える。

「プロミネンテ ソロテンポ」は、アイコニックな長方形のフォルムをベースに魅力的なディテールをふんだんにちりばめた。ケースはレクタングラーの下にもう1段、優美な曲線のフレアをもち、一体型の短いラグを備える凝った構造。ギョーシェで仕上げたダイヤル中央はオーバル形のマザー・オブ・パール(MOP)を象嵌し、ディストーションしたアラビア数字と優美なリーフ針、レイルウェイ・インデックスを備える。アールデコ・デザインを背景にした上品さと、刺激的なテイストを併せもつ。

一方、ラウンド形の「ヒストリアドール ルナ」は、ムーンフェイズ表示を備えたトリプルカレンダー。その複雑さを押し隠すのではなく、大胆なオープンワークで惜しげもなく披露する。斜体文字の曜日は下弦、月は上弦の窓で文字盤の左右に振り分け、日付は二等辺三角形の先端が示すポインターデイト。白地に青と黒の対比、絶妙な見切れスペースが、独創的なビジュアルをつくる。

もともとクエルボ・イ・ソブリノスは20世紀半ばまでキューバでいちばん栄え、ヨーロッパに進出した超有名時計店だ。スイスでつくらせたショップウォッチは、欧州の顧客をも魅了した。極上のラティーノアメリカーノを扱う店の顧客名簿には、件のヘミングウェイの名前も連ねる。キューバ革命を機に長い休眠期間に入り、約40年後に颯爽と復活。時空を飛び越えたブランドには、朽ちない魅力がある。

  • ヒストリアドール ルナ

    ●自動巻き、ステンレス・スチール、ケース径40㎜、ケース厚11.25㎜、パワーリザーブ42 時間、トリプルカレンダー、ムーンフェイズ、文字盤と同色のローター、シースルーバック、アリゲーター革ストラップ、30m防水、日本限定30本。¥638,000(税込)

  • プロミネンテ ソロテンポ

    ●自動巻き、ステンレス・スチール、ケースサイズ52×33.75㎜、ケース厚10㎜、パワーリザーブ42時間、ローターに“CyS”の装飾、中央部にMOPを配したシルバー文字盤、シースルーバック、アリゲーター革ストラップ、30m防水。¥495,000(税込)

ムラキクエルボ・イ・ソブリノス TEL:03-3273-0321