新発想に満ちた、掃除機市場のニューカマー

  • 文:神原サリー

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青野 豊・写真photographs by Yutaka Aono

新発想に満ちた、掃除機市場のニューカマー

ヘッドが曲がり家具の下にするりと入り込む。写真はバッテリーが2個付属する上位機種「S30」¥69,800(税込)

アメリカからまたひとつ、すごい掃除機がやってきた。シャークニンジャが手がけるコードレススティック掃除機「EVOFLEX(エヴォフレックス)」だ。シャークという製品名、スチームクリーナーなどで聞いたことがあるかもしれないが、北米ではこの10年間に累計5000万台以上もの売上実績をもつ米国トップの掃除機ブランドとして知られる。この夏、満を持して日本に上陸となったのだ。 
ここで注目したいのが、同社の日本法人の社長がゴードン・トム氏だということ。彼は1990年代にダイソンを日本市場に展開、その後、北欧の大手家電メーカー、エレクトロラックスの日本法人の社長に就任。エルゴラピードを導入して「コードレススティッククリーナー」という新しいカテゴリーを創出した。日本のクリーナー市場の礎を築いた人物なのだ。 
そんな彼が惚れ込んだエヴォフレックスは、ひとつのヘッドにメインのローラーと、より細かなゴミをかき出すブラシが搭載されていて、ヘッドの付け替えなしにいろいろな床面を掃除できるのが最大の特徴。上位機種には着脱式のバッテリーがふたつ付属していて、バッテリー切れの心配がないのも画期的だ。充電用ドックを使って単体で充電することも、掃除機につけたままで充電することもできるなど、使い勝手もよく考えられている。 
そしてとてもユニークなのが、ボタンひとつでパイプが曲がってソファやベッドの下などの掃除もかがまずにできること。実際に使ってみるとこれが実に楽しく、身体にも負担がなくてうれしい。この「曲がる」というのは、収納時にも活きてくるポイントで、ボタンを押してサッと畳むだけで自立式の収納モードになり、驚くほどコンパクトに変身してどこにでも収納できてしまう。 
オールブラックの見た目や折り畳める点などは、男性受けする「俺家電」といった印象だが、ゴツく見えるヘッドもスムーズな自走でハンドルに軽く手を添えるだけで掃除ができるので、思いのほか女性にも使いやすくなっている。軽く掃除できるのに吸引力も見劣りせず、フローリングでもカーペット敷きの部屋でも見事にきれいになる。ゴミ捨てもパイプを外してゴミ箱の上に持っていき、ボタンを押すとフタが開いて落ちる仕組みで面倒がない。あえて難を言うとすれば、ペットの毛などが多いとゴミが固まり、落ちてきづらいという点だろうか。 
付け替え不要のヘッドにしても曲がるパイプにしても、ダイソンにはないアイデアを実現させて、それをアピールしていこうという姿勢が見て取れる。ゴードン氏にとって3回目となる、掃除機市場での挑戦。いまから実に楽しみだ。

収納時は、折り畳めば高さ50㎝ほどのコンパクトなサイズになる。重量は3・33㎏なので、持ち運びも楽だ。

神原サリー
新聞社勤務を経て「家電コンシェルジュ」として独立。豊富な知識と積極的な取材をもとに、独自の視点で情報を発信している。2016年、広尾に「家電アトリエ」を開設。テレビ出演や執筆、コンサルティングなど幅広く活躍中。
※Pen本誌より転載