ミシン初心者にお薦めしたい、コンパクトな逸品。

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    青野 豊・写真photographs by Yutaka Aono

    ミシン初心者にお薦めしたい、コンパクトな逸品。

    マットな黒が映える。ボタンやスイッチは必要最低限で、まさにエントリー機として最適な一台だ。¥11,000(税込)

    「アックスヤマザキ」は1946年創業、大阪にあるミシンメーカーだ。もともとは輸出用や、アメリカの老舗ミシンメーカーである「シンガー」のOEMなどのコンパクトなミシンを手がけてきた。若い世代の“ミシン離れ”が懸念される昨今、同社3代目社長である山﨑一史氏は、「デザイン家電のようなスタイリッシュな佇まいで、本棚に置いておけるようなミシンをつくれば、より多くの人に使ってもらえるのではないだろうか」と考えたという。
    本体幅29.4cm、高さ26.5cmと、このPen本誌に収まってしまいそうな小さなサイズ感が目を惹く。加えてマットなブラック一色でこれまでのミシンとは一線を画すデザインは、子どもの誕生をきっかけにホームソーイングをしたいと思う人が多いことから、「子育てにちょうどいいミシン」と名付けられた。折しも、コロナ禍によるマスクの手づくり需要も相まって、当初の計画販売台数の3倍以上の売れ行きになっているというのにも納得できる。
    出しっぱなしにできるインテリア性の高さはもちろんだが、重さ約2.1㎏と驚くほど軽く、使いたい場所に気軽に持ち運んですぐに作業に取りかかれるのがいい。ACアダプターが付属しているが、単3のアルカリ乾電池4本でも使えるのがとにかく便利なのだ。聞けば、トルクを減らすなどの工夫をし、老舗のミシンメーカーならではのパワフルな運転と電池のもちとを両立させたという。リビングのローテーブルに置いて床に座って使うもよし、ダイニングテーブルに置いてフットスイッチで使うもよし。書斎のスタンディングデスクで立ったまま使用することもできる。
    フットスイッチを使わないときには、スピード調節レバーを右にスライドすれば針が動き出す。速さは「SLОW」と「FAST」の2段階のみ。その上には「返し縫い」用のレバーがあるという具合で使い方はとてもシンプルだ。4つの送り幅の直線縫い、3つの振り幅のジグザグ縫い、ボタンホール、点線ジグザグ、まつり縫いとひと通りの縫い目が揃っているので、初心者がつくってみたいと思うようなものは十分カバーできるだろう。厚手のデニムにも対応している。
    購入してすぐに縫い物ができるように、レシピ集や使い方など動画がとても充実していて、スマホで動画を見ながら作業できるようにスマホスタンドも付属している。このスタンドは向きを変えるとミシンの針ガードにもなるという具合に、細部まで配慮されているところにアックスヤマザキの“ミシン愛〟を感じる。
    入門用に最適なスペックをもつこのミシン。長く愛用してきたシャツやデニムのリメイクにも挑戦してみたくなること請け合いだ。

    収納時にミシンの針カバーとなる部品がスマホスタンドに。動画を見ながら縫い方のチェックができる。

    神原サリー
    新聞社勤務を経て「家電コンシェルジュ」として独立。豊富な知識と積極的な取材をもとに、独自の視点で情報を発信している。2016年、広尾に「家電アトリエ」を開設。テレビ出演や執筆、コンサルティングなど幅広く活躍中。
    ※Pen本誌より転載