深淵を覗く時、真円もまたキミを覗いている!? 911 ...

東京車日記いっそこのままクルマれたい!

第90回 PORSCHE 911 GT3 RS / ポルシェ 911 GT3 RS

深淵を覗く時、真円もまたキミを覗いている!? 911 GT3 RSの色即是空ドライブとは。

構成・文:青木雄介

編集者。長距離で大型トレーラーを運転していたハードコア・ドライバー。フットボールとヒップホップとラリーが好きで、愛車は峠仕様の1992年製シボレー カマロ改。手に入れて11年、買い替え願望が片時も頭を離れたことはない。

911シリーズ最強の自然吸気エンジンモデル。

新型911が話題のこの時期にあって温故知新ですよ。先代991型後期のスーパーハイエンドモデル、911 GT3 RSのステアリングを握った。3日間で峠を中心に400㎞ほど乗ったんだけど、胸に去来するのは“色即是空”。そして個人的な「ベスト・ポルシェ」の思いを新たにしたんだな。
GT3は、ポルシェ 911シリーズ究極の自然吸気エンジンモデル。あらゆるパーツに軽量化が施され、ハードコアな走行性能が追求されているのね。RSはさらに競技性を高め、完全に体勢が固定されるフルバケットシートにロールバーを組み込み、超がつくほどの特大ウイングを搭載している。先頃、ポルシェの公式声明でも「GTシリーズの電動化は、ハイブリッドも含めて予定なし」と発表があって、熱狂的なファンは胸をなでおろしたばかり。
それはともかく、カラーリングは最近流行のライムグリーン。人気レーサー、ケン・ブロック気分でご機嫌だね。でもそのカラー(色)もまた、走行性能の前には「これ空なり」かな。
そもそもポルシェはスポーツ性能を追求するため、出力とシャシー、車両のバランスを計算し尽くし、いわゆる“チリの合わせ込み”と呼ばれる精度で組み立て完成させる。代表的なのが911シリーズで、911 GT3 RSは自然吸気エンジンならではの9000回転まで達する高回転型の美しいエキゾーストノートが魅力。ハンドリングは軽快かつフラットで、つぶさに路面の情報を伝えてくる。

ポルシェの思想を物語る、911シリーズの到達点。

絶品なのがブレーキで、効きは鋭く、ローターにパッドが接触するリアルな感触とともに、抵抗圧が瞬時に理解できてコントロール自在。まるで切れ味鋭い銘刀を携えている気分だね。シャシーはロールバーの効果もあって堅牢だし、峠ではライトウェイトな敏捷性で、抑えきれないトルクステアが発生するほど。足まわりに至ってはレーシングカーそのもので、バケットシート越しに車体の情報をビリビリと電流を流すように伝えてくる。すべてのベールを取り去った、走りの本質(コア)として体感できるのが特徴なんだ。

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