規格外の重さで送り出す、妥協なき音質。
家電コンシェルジュ
concierge 麻倉怜士 Reiji Asakura
デジタルメディア評論家。1950年生まれ。デジタルシーン全般の動向を常に見据えている。巧みな感性評価にファンも多い。近著に『高音質保証!麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)がある。

青野 豊・写真
photographs by Yutaka Aono
エー・アンド・ウルティマ SP2000
A&ultima SP2000 〈ポータブルプレーヤー〉

規格外の重さで送り出す、妥協なき音質。

デュアルバンドWi-Fi、512GBのメモリーを内蔵するなど、スペックも高い。実勢価格¥480,000(税込)

アステル&ケルンの「エー・アンド・ウルティマ SP2000」は、音とデザインに徹底的にこだわるなら、これほどのプレーヤーができるという格好の見本である。アステル&ケルンは韓国の高級デジタル・オーディオプレーヤーブランド。私は当初のハイエンドプレーヤー「AK240」(2014年)から同社のものづくりを追っているが、技術革新の積極的な導入ぶりと徹底した情報量指向の音づくりには、いつも刮目させられる。
今回のSP2000の音質はひとこと、上質だ。ハイレゾ音源に含まれるあらゆる種類の音を、とても微少な信号から強大な大音量まで、すべての強弱レベルで最大限の情報量にて再生しようとしている。その結果、密度感の高い音となる。微小なニュアンスの再現に優れ、微細な音の変化にも敏感に反応する。音のエネルギーを濃密に凝縮したような上質な力感だ。蕎麦粉が名人の手にかかると、適度な弾力と旨さをもった蕎麦になるように、まさに「練りに練られた音」だ。
高音質の理由は、綿密な音づくりのノウハウに加え、最新の高音質DAC(デジタル信号をアナログ信号に変換するデバイス)を搭載したことだ。いま、ハイエンドオーディオの世界で人気なのが旭化成エレクトロニクス(AKM)のDAC。これまで高級オーディオはアメリカ製のDACに支配されていたが、この“日の丸DAC”を世界のメーカーが続々と採用している。アステル&ケルンはこのAKM製DACがいまほど話題を呼んではいなかった15年に、ハイエンド第2弾の「AK380」から早くも採用している。
今回は、さらに画期的なことをやった。AKMの最新型DACを世界で初めて搭載したメーカーになったのだ。AKMのトップエンドデバイス「AK4499EQ」が、数多の世界の有名オーディオメーカーのハイエンド機器を差し置いて、この携帯プレーヤーに初めて搭載されたのである。アステル&ケルンは開発の過程からAKMに協力し、共同でさまざまなノウハウを積み重ねていった。SP2000では、この最高峰のDACを2個使いして、さらなるノイズ低減を図った。本機の透明感が高く緻密で濃密な音調は、まさに最新DACの威力であろう。
このプレーヤー、もの凄く重い。携帯用というのに、430gもある。音質向上のために、AK4499EQが従来比で消費電力を倍にしたからだ。それに伴い、バッテリー容量を大幅に増やした。オーディオは贅沢であればあるほど音が良い。省エネなど考えては、音は貧弱になる。だから、これほど重たいのは、持つとびっくりするけれど、音のために妥協しなかったことを雄弁に物語っているのである。

規格外の重さで送り出す、妥協なき音質。

背面パネルは、ネジ穴を排したフルプレートを採用。ステンレススチール(手前)と銅のバージョンがある。

アユート www.iriver.jp

※Pen本誌より転載
規格外の重さで送り出す、妥協なき音質。

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