フルサイズの悩みをセクシーに解決!? BMWのX7に、V8エンジンを選びたい理由。

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    東京車日記いっそこのままクルマれたい!

    第105回 BMW X7 xDRIVE35d / BMW X7 xドライブ35d

    フルサイズの悩みをセクシーに解決!? BMWのX7に、V8エンジンを選びたい理由。

    構成・文:青木雄介

    編集者。長距離で大型トレーラーを運転していたハードコア・ドライバー。フットボールとヒップホップとラリーが好きで、愛車は峠仕様の1992年製シボレー カマロ改。手に入れて11年、買い替え願望が片時も頭を離れたことはない。

    BMWのXシリーズで旗艦モデルとなるX7。

    BMW初のフルサイズSUV、X7に乗った。地下駐車場で、フロントのキドニーグリルの堂々とした押し出しとその巨大さに直面した時、思わず顔がにやけたよね。これは「未だかつてない!」ってね。さらに試乗中、たまたまX7と擦れ違う僥倖にも恵まれたんだけど、遠くからでもひと目見てそれとわかる存在感。「でかっ!」と思わず言葉が出たし、実際に目にする前に抱いていた、BMWの人気SUVであるX5と「そんなに違わないかも」という思い込みは砕け散ったんだ。もう全然違うよね。オーケストラのスケール感で言うと、3管編成(主要な管楽器が3本ずつの編成)をX5とすれば、このX7はフルオーケストラの部類に入る5管編成といったところ。3管編成も大きいほうだと思うけど、5管編成ともなれば文字通りのフルサイズ。X7を語る上で、このフルサイズという概念は欠かせないんだ。

    なぜBMWがフルサイズのSUVをつくったのか? もちろん傘下のロールス・ロイスがSUVのカリナンをつくるにあたって、BMWもシャシーを共有したいという理由はあったはず。とは言え乗ってみると、BMWは「乗員6人の幸福値を最大限取れるフルサイズのSUV」をラインアップに置いておきたかったんだろうな、という気がした。X5のようなファミリーサイズではなくてね。その居心地は6人乗れるサルーンって感じ。特に2列目、3列目のガラスルーフがもたらす開放感は強烈で、2列目の独立型シートに座る乗員のためのフルサイズということがよくわかる。よく2列目は“キャプテンズシート”と呼ばれるんだけど、その狙い通りの意図を感じる。水平に大きく取られた見晴らしのいい視界がガラスルーフとあいまって、まるで海辺のホテルのベランダにあるデッキチェアのような開放感なんだ。

    そんな2列目至上主義なSUVだけに、足まわりはもちろんエアサス。前方に付いたステレオカメラで路面状況を把握してサスペンション制御しつつ、ロール制御も行うエグゼクティブ・ドライブ・プロを搭載。手動でも切り替えられる5段階の車高調整が可能で、その乗り心地もエグゼクティブというよりはハイエンドだね。車体が大きくなっても揺らぎやロールは許さないし、2.5tの自重ながら足まわりは絶妙のバランスを取っている。フルサイズなのに狭いワインディングや混雑したサービスエリアでも、驚くほど気後れしないSUVでもあった。

    すべてがハイエンドな、フルサイズSUVの魅力。

    試乗したX7に搭載されたエンジンは、X5と同じ3Lの直列6気筒ディーゼル。車体が重く大きくなったぶん、X5に比べてメリットは相殺されているものの不満はなし。相変わらず1Lあたり10kmぐらいは走るし、物足りなさを感じさせないように健気にパワーバンドを大きく使っていて、ものすごく有能。そもそもBMWの3L直列6気筒ディーゼルは唯一無二のポテンシャルをもった名機と考えているんだけど、個人的には一も二もなく、X7 M50iの「4.4LのV8エンジンを選びたい」と思った。まだ乗れてないけどね(笑)。そこはフルサイズ故に、オーバースペック推奨の北米式フルサイズ道に殉じたい。フルサイズの車体を、目も眩むような圧倒的パワーで連れ去ってほしい(笑)。

    これは開放感に加えて、さらに2列目を特別なシートにするためでもあるし、最近のBMWのV8エンジンはドライブモードとのコンビネーションが秀逸で、特にエコ・プロのようなニュートラル走行でゆったりとクルーズさせる走りがX7にぴったりということもある。見た目は5管編成のフルオーケストラなのに、実際は音量も迫力も3管編成のスケールだった、というのはちょっと悲しい。そこにフルオーケストラならではの突き抜けた感動がほしくなるんだ。やっぱりBMWのフルサイズに乗るなら、「エンジンは?」っていうのがいちばん気になるところでもあるし。

    メルセデスのGLS、アウディのQ8といったフルサイズSUVのライバルに対して、X7は後発ならではの差別化が図られているし、そのメリットを活かしていると思う。これは5シリーズや7シリーズのようなBMWの上級セダンにも言えるんだけど、スーツのような定番フォーマルとの親和性の高さなんだ。X7もまた6人の乗員全員が敏腕エージェントよろしくスーツで乗り込みたいフルサイズだし、会合のあるホテルや料亭、または銀行や官公庁にドンと乗り付けたいSUV。自分がネットフリックスのような海外ドラマの制作をやっているなら、デキるスーツ族には絶対、X7をコーディネートしたいと思ったね。

    • 質感が高められた新世代のインテリア。

    • 美しい木目に映えるクリスタル製のシフトノブ。

    • ホイールベースをつなぐエアブリーザーは、ホッケーのスティックをイメージ。

    • 3列目シートは大人が座っても十分なスペースを確保。

    • 特徴的な流線形のエントランスライト。

    • オプションのスカイ・ラウンジ・パノラマ・ガラス・サンルーフを選ぶと、ライトによる星空の演出が楽しめる。

    BMW X7 xドライブ35d
    ●サイズ(全長×全幅×全高):5165×2000×1835mm
    ●エンジン形式:直列6気筒DOHCディーゼル
    ●排気量:2992cc
    ●最高出力:265PS/4000rpm
    ●駆動方式:4WD(フロントエンジン4輪駆動)
    ●車両価格:¥12,089,000(税込)

    ●問い合わせ先/BMWカスタマー・インタラクション・センター
    TEL:0120-269-437
    www.bmw.co.jp