プレスリーが憑依するのは、革ストラップかブレスレットか。
両天秤の腕時計
文:並木浩一 写真:宇田川 淳

プレスリーが憑依するのは、革ストラップかブレスレットか。

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HAMILTON
ハミルトン

革ストラップか、ブレスレットか。ハミルトンのベンチュラについては、問題は特に深刻だ。60年前、エルヴィス・プレスリーも同じことを考えていた。彼は時計店で、私物のベンチュラをカスタマイズしたという。
色男にベンチュラが似合うと世界が知ったのは、彼の出演映画『ブルー・ハワイ』からだ。故郷ハワイに到着した飛行機のタラップで、金髪のCAにキスするGI姿。その腕の時計は、全編を通して彼と一緒にある。映画の後もプレスリーはベンチュラを着けたオフショットを何度も撮られた。CM契約もなく、ブランドアンバサダーでもないのに、だ。
なにしろ電池で駆動する初めての腕時計ベンチュラは、ひたすら格好よかった。機械式のフリークすらベンチュラを認めるのは、1957年のオリジナルからそもそもゼンマイとは無関係だからで、クオーツになびいたわけではないからだ。
それまでの腕時計と決別したかのようなアシンメトリーの造形は、時代の男たちを刺激した。盾形のフォルムは、時計が丸形であるべきだという先入観を軽く無視する。何層ものフレアを従えて疾走するようなデザインは、テールフィンをなびかせたキャデラックのデザイナー、リチャード・アービブによる。あのキャデをいま走らせるのは無謀であっても、腕時計のアメリカン・グラフィティは、文字盤中央の“エレクトリック・マーク”とともに健在だ。
アロハシャツの腕に見えた革ストラップのベンチュラは、ひときわ輝いていた。一方でバックルもなしに一瞬で着脱できる、伸縮自在なフレックスブレスレットもまた、ミッドセンチュリーの生んだ傑作アイテム。プレスリーがのちにこちらに浮気したのも無理はない。さて、ストラップか、ブレスレットか。プレスリーにとっては、ブロンドとブルネット女の違い、くらいでしかなさそうな悩みなのではあるが。

  • ベンチュラ

    ●クオーツ、ステンレス・スチール+イエローゴールドPVD加工、ミネラルクリスタルガラス風防、ケースサイズ32.3×50.3mm(Lサイズ)・同デザインのSサイズ(24×36.5mm)設定あり、クロコ型押しカーフ革ストラップ、5気圧防水。¥109,080(税込)

  • ベンチュラ

    ●クオーツ、ステンレス・スチール+イエローゴールドPVD加工、ミネラルクリスタルガラス風防、ケースサイズ32.3×50.3mm(Lサイズ)、シルバーカラーの設定もあり、ベルト付け幅17mm、フレックスブレスレット、5気圧防水。¥109,080(税込)

●ハミルトン/スウォッチ グループ ジャパン TEL:03-6254-7371

プレスリーが憑依するのは、革ストラップかブレスレットか。

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