黒のシックさと白の華やぎを競う、由緒正しき双子モデル

  • 文:並木浩一
  • 写真:宇田川 淳

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両天秤の腕時計
文:並木浩一 写真:宇田川 淳

黒のシックさと白の華やぎを競う、由緒正しき双子モデル

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CHAUMET
ショーメ

ショーメの「ダンディ」といえば、出色の高級ドレスウォッチとしてつとに有名だ。印象的なクッションシェイプは、武骨なはずの男の手首も、貴族的に洗練してみせる。バリエーションの中でもスモールセコンド三針の手巻き、しかもゴールドモデルは、絶対的な完成度にあるといってもいいだろう。
ブラックタイからカジュアルシックまで守備範囲は広く、ビジネスシーンに似合う謙虚さものぞかせる。気品こそがオールマイティの資格なのだと、思い知らされる腕時計。その“ダンディ”さの二通りの表現が、黒と白を揃える文字盤の選択肢である。黒文字盤のサーフェスは、驚くほど艶やかなラッカー仕上げ。一流のショコラティエが練ったクーベルチュールのような深いシャイニーブラックが、光を吸い込んで妖しく輝く。いっぽう白文字盤には清潔感があり、しかも華やかだ。表面に微細な粒々を立たせるグレイン仕上げが入射光を単調には返さず、真珠のような乳白色に映す。
明度0%と100%の黒と白は、それでも同じ意匠を共有した。フェイス上の2時半から9時半に引かれたホライズンがあり、左下の垂直方向に伸びる“バヤデールストライプ”が文字盤色に溶け込むように、細かな杉綾の連続で敷かれている。ショーメの代名詞とも言えるこの縞模様の名は、古典バレエの名作“ラ・バヤデール”でもお馴染みの、インドの踊り子の衣装にちなむ。そういえばショーメの本店はバレエの聖地、パリ・オペラ座にも近い。名店の伝統を紡ぐストライプは、別売りのNATOストラップにも採用される。
両極端の黒と白にはお互いの長所も隠れていて、黒文字盤にはタキシードクロスのような華やぎが、白文字盤にはノーブルな真珠色のシックさも備わる。ショーメの遺伝子を共有する良血の双子は、異なりながら似ているのである。

  • 「ダンディ」コレクション

    ●手巻き、18Kピンクゴールド(ポリッシュ&つや消し仕上げ)、ケース径38mm、ケース厚8.30mm、パワーリザーブ42時間、ケースバックにバヤデールストライプパターンのエングレービング、アリゲーター革ストラップ、30ⅿ防水。¥1,965,600(税込)

  • 「ダンディ」コレクション

    ●手巻き、18Kピンクゴールド(ポリッシュ&つや消し仕上げ)、ケース径38mm、ケース厚8.30mm、パワーリザーブ42時間、スモールセコンド、リューズにダークブルーサファイアをセット、アリゲーター革ストラップ、30ⅿ防水。¥1,965,600(税込)

●ショーメ TEL:03-5635-7057