いま時のファストバックでハニー“トラップ”!? RS 5 スポーツバックで、2020年代のトレンドを占う。

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    東京車日記いっそこのままクルマれたい!

    第102回 AUDI RS 5 SPORTBACK / アウディ RS 5 スポーツバック

    いま時のファストバックでハニー“トラップ”!? RS 5 スポーツバックで、2020年代のトレンドを占う。

    構成・文:青木雄介

    編集者。長距離で大型トレーラーを運転していたハードコア・ドライバー。フットボールとヒップホップとラリーが好きで、愛車は峠仕様の1992年製シボレー カマロ改。手に入れて11年、買い替え願望が片時も頭を離れたことはない。

    RS 5で初導入となるスポーツバック。ソノマグリーン メタリックは専用色だ。

    最初、新型のアウディ RS 5のフロントフェイスを写真で見た時、「これってR34型スカイラインへのオマージュ!?」って思ったのね。箱型のクーペボディに凛々しい目つき。V8の自然吸気からV6ツインターボに変更されて、もちろんクワトロ(4輪駆動)。いろんな意味で「間違いなさそう」とは思ったものの、先行して発売されたクーペはいまひとつピンとこなかったんだな。まぁリアにウィングが付いていなかったからかもしれないけど(笑)、今回出たスポーツバックは「これ!」って感じがしたね。個人的な幻影は取り払われたし、なによりめっちゃ格好いい。

    実車を見ると、フロントフェイスがそんなに似ていないのもわかった。シルエットは肉感的で、むしろGT-R寄り。乗ればなるほど、第二の山口百恵を予感して話題のアイドルのコンサートにやって来たら、フィメールラッパーのカーディ・B、あるいは“ちゃんみな”がラップしてたって感じ(笑)。オマージュどころか、いま時のスポーツカーだったよね。2010年代から20年代に突入する、ちょうど「いまそこにあるアウディ」って感じかな。

    あえてこのスポーツバックというジャンルを深掘りしているスタンスが、アウディらしくてお洒落。ゴルフ場の駐車場に停めていても、抜群に映えるよね。これでシャープなスタイリングを保てて、好戦的なリアのファストバックスタイルが効いている。むろんリアウィングなんか全然いらないですよ。もうファストバック最高でしょ。

    走らせてみるとスタイリングにも増して、2010年代から現在に至るトレンド要素は網羅されているのね。あらゆる外部音をミュートしつつ、繭に包まれている感覚に重なる濃密なV6エンジンの存在感が、洗練のスポーツカーを印象づける。ちゃんと排気音はスポーツエグゾーストシステムでチューニングされているわけだけど、街乗りで走っているぐらいのスピードでも、軽快なステアリングとあいまってとにかくスタイリッシュなんだ。20年代に向けての感覚で言えば、シャシーの骨太感を主張していないこと。さらりとスポーツカーを着こなす感じが秀逸なのね。

    最先端の走りを実現する、次世代のスポーツバック

    今回搭載されているV6エンジンはVバンクの間にターボチャージャーを挟んだ、メルセデス・ベンツの“ホットインサイドV”のV6版みたいな構造をしている新開発のエンジン。ポルシェとも共有しているエンジンで、RS 5用のセッティングはドライブモードがコンフォートでもアクセルに対するトルクのつきが鋭くて、広めのトルクバンドを自在に使える。4.2ℓのV8エンジンからダウンサイズした、この2.9ℓのV6ツインターボへの変更は大成功だよね。ボディサイズから言っても理にかなっているし、より洗練されたスポーツマインドをかき立てる。軽快で速いV6の高性能を絵に描いたようなエンジンだからね。燃費もいいし。

    モードをダイナミックに変えてドンとアクセルを踏めば、4輪がガツンと路面に食いつくアウディらしい走り。回転数を高めにしつつ、峠から首都高まで“爆速のスポーツバック”って感じ。その気がなくても自然と追い越し車線に入ってしまうって言うか、V6ってやっぱりそういうエンジンなんだ。「踏め」とクルマに煽られることはなくとも、「つい踏んじゃってました」と交通機動隊に言い訳するみたいな(笑)。その意味では、生粋のR34型スカイライン乗りの皆さんにも試してほしいよね。スポーツバックのよさを心底理解しつつ、時代が一気に2020年代に更新されるだろうから。

    RS 5はコンフォートも、アクセル開度に応じてモードを自動で変更するオートもめっちゃいい。アウディスポーツの足まわりを支えるDRC(ダイナミックライドコントロール)がステアリングの鋭さを担保しながら、品のいい足まわりにしていることもある。とはいえいちばんの理由は、前述したV6エンジンには中毒性があって、それこそV8自然吸気みたいな「いつでも踏める」という臨戦態勢を保ったままクルーズしていても退屈じゃないこと。この中毒性って、2010年代に音楽シーンで猛威を振るったトラップやEDMにぴったりの感覚なんだよね。

    低音のベースがあって、鋭く軽快な操作系が乗る感じ。中間音が排除される感じかな。繭に包まれるような感覚の理由は意識的な演出だし、このV6エンジンがあって、日常と非日常をドライブモードできっちり分けられるのがRS 5 スポーツバックの魅力。むろんゴリゴリのトラップを流すのは最高なんだけど、きっと足りない中間音を補うのはパートナーとの会話、あるいはステレオから流れてくる山口百恵のボーカルじゃないかな(笑)。トラップとエバーグリーンなエターナルボイス。RS 5 スポーツバックはお洒落ですよ。あははは。

    • V6ツインターボエンジンはポルシェの新型マカンと共有している。

    • メーターパネルにはRS専用バーチャルコクピットを表示。

    • シンプルなエントランスライト。

    • 前後の軸駆動力は40:60、ホイールの標準は20インチに設定。

    • RS専用の楕円形テールパイプを配したエグゾーストシステムを搭載。

    • トランク容量は480ℓで、ゴルフバッグは縦置きも可能。

    アウディ RS 5 スポーツバック
    ●サイズ(全長×全幅×全高):4780×1860×1390mm
    ●エンジン形式:V型6気筒DOHCツインターボ
    ●排気量:2893cc
    ●最高出力:450PS/5700rpm
    ●駆動方式:4WD(フロントエンジン4輪駆動)
    ●車両価格:¥13,020,000(税込)

    ●問い合わせ先/アウディ コミュニケーションセンター
    TEL:0120-598-106
    www.audi.co.jp