焼きそば界を牽引する、新旧こだわりの6軒

  • 写真:松村隆史
  • 編集&文:久保寺潤子

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こだわりの製法による自家製麺、吟味された具材とのマッチング、秘伝のソース……。慣れ親しんだ焼きそばは、専門店ならではの究極の味を堪能したい。


“両面焼き”を編み出した、焼きそば専門店の先駆的存在

サイズは小、中、大の3種類。焼きそばとのセットメニューやビールに合うおつまみも多数。「両面焼きそば(中)」¥900(税込)、生卵¥50(税込)

30年前、焼きそば専門店として開店した「両面焼きそば あぺたいと」は、焼きそばブームの先駆け的存在だ。吟味した小麦でつくる自家製麺をゆでてから焼き上げ卵をのせるスタイルは開店当時、東京ではまだ珍しかった。代表の飯野雅司さんが長年かけて編み出した調理法は“両面焼き”。カンカンに熱した鉄板に麺を広げ、コゲ目がついたらひっくり返し、さらに焼き色をつけてから具材とソースを絡める手法だ。

焼きたてを頬張ると、全粒粉の入った麺の香りがカリっとした食感とともに鼻腔を抜ける。ソースはウスターベースのシャバシャバ系、キャベツはあえて入れず、モヤシのシャッキリ感と麺のコントラストが旨味を引き立てる。トッピングの卵は生、温玉、目玉焼きの3種から選べる。主張しすぎない味は地元のファンをはじめ、遠方からのリピーターをも虜に。紅ショウガたっぷりの名物「紅生姜サワー」をお供に、シンプルで奥深い焼きそばを味わいたい。


両面焼きそば あぺたいと 高島平本店

住所:東京都板橋区高島平7-12-8 
TEL:03-3938-6302
営業時間:11時〜22時 
定休日:月(祝日の場合は営業、翌火曜休)
www.apetaito.com/honten.html

※営業日時・内容などが変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。

麺・ソース・具材が一体となって、感動を呼ぶ

ハリと弾力のある麺に、秘伝のソースが絡み合う。大盛り無料の「ソースやきそば」¥800(税込)、肉増し¥100(税込)、イカ・エビトッピング¥100(税込)

創業6年にして、群雄割拠の神保町界隈で人気店となった「神保町やきそば 威風みかさ」。昼時には長蛇の列ができ、売り切れ終いという潔さだ。熊本出身の初代が始めた頃は甘みが強かったソースだが、試行錯誤を重ね10種のスパイスを配合した独自の甘辛テイストに。北海道小麦100%のストレート麺は、ゆでる前に一食ずつ手で揉み、縮れさせることでソースを絡みやすくした。

ソースは麺、豚肉、仕上げの追いかけ用と異なるものを使用しているため、食べ進めるたびに味が重層的に広がっていく。半熟溶き卵の優しい食感と、全体をピリッと引き締める白髪ネギの存在が調和を奏で、あっという間に完食。すべての具材が無駄なく計算されながら、ひと皿に集約されているのは見事だ。客の8割は「ソースやきそば」を注文するというが、塩にこだわったあっさりめの「塩やきそば」もまた格別。焼きそば界を牽引する感動の味をぜひご賞味あれ。


神保町やきそば  威風みかさ

住所:東京都千代田区神田神保町2-24-3
TEL:03-3239-5110 
営業時間:11時〜19時(売り切れ終了) 
定休日:日、祝 
http://mikasain.com

※営業日時・内容などが変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。

もっちりシコシコ、立体的な麺の食感が楽しい!

自分で混ぜて完成させるのも楽しい。豚肉、エビ、キャベツ、モヤシ、ネギ、半熟玉子すべて入った「スペ油焼きそば(並)」¥970(税込)

丼の中で麺とタレを混ぜて食べる「油そば」からヒントを得て命名した「油焼きそば」だが、使用する油の量はむしろ少ない。

ジュージューと湯気を立てて運ばれる土鍋の中には、あらかじめ鉄板でムラなく焼いた太麺をコクのあるソースと特製出汁で調理したものに、生のモヤシや具材がのっている。これを豪快にかき混ぜ、余熱で具材がしんなりしたら食べ頃だ。全粒粉入りの極太生麺は表面がつるつる、歯ごたえはもっちり、ほんのり芯の残るアルデンテという絶妙さ。鍋底のお焦げも香ばしく、食感に変化球を投げかける。中盤に差しかかる前にトッピングの半熟玉子を落とし入れ、マイルドな味わいを楽しんだら、卓上にあるマヨネーズ、紅ショウガ、天かすを心おきなく投入しよう。もっちり、カリカリとした麺の立体的な食感とトッピングによる味の変化が存分に楽しめる。これこそ進化系焼きそばの醍醐味だ。


油焼きそば りょう

住所:東京都港区浜松町2-2-9 佐藤ビル3F 
営業時間:11時30分〜14時30分 
定休日:月は不定休、土、日

※営業日時・内容などが変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。

どんな具材も受け止める、極上太麺のポテンシャル

手前:「特製ソース焼きそば」¥780(税込) 右:100%有機トマトケチャップの「ナポリタン焼きそば」¥780(税込) 左:「海鮮バター醤油焼きそば めんたいソース乗せ」¥880(税込)

首都圏に5店舗を展開する「焼きそばのまるしょう」。驚くのはその種類の多さだ。定番のソース焼きそばはもちろん、カレーソース、ベーコン&ポテトバター、海鮮五目あんかけにナポリタン、イカスミ、韓流ラージャンまで10種類以上の焼きそばに加え、トッピングメニューもずらり。老舗メーカー、トキハソースを使ったオリジナルソースや宮古島の雪塩、野田しょうゆなど調味料のこだわりが個性的な味を生み出している。

店内で打つ麺は3種類の小麦をブレンドしたもの。注文を受けてから一人前ずつフライパンで調理する。もっちりした麺はどんな具材とも相性抜群で、焼きそばの無限の可能性を感じさせる。いろいろな味を楽しんでほしいと、夜は焼きそばとドリンクが食べ・飲み放題となる宴会メニュー¥4,000(税込)も提供。近隣の学生からサラリーマンまで、焼きそばを愛してやまない腹ペコ男子たちの憩いの場所となっている。


焼きそばのまるしょう 本郷三丁目店

住所:東京都文京区本郷3-42-7 
TEL:03-3868-2827 
営業時間:11時〜16時、17時〜23時 
定休日:日
https://yakisobano-marusyo.com

※営業日時・内容などが変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。

昭和の薫り漂うカウンターで、懐かしい味に出合う

焼きそばにビールやホッピー、おつまみを頼んでも1,000円というセンベロ価格が嬉しい。「鉄板焼きそば」¥350(税込)、目玉焼き¥100(税込)

東京オリンピックが開催された1964年に創業した「福ちゃん」は、東京メトロ銀座線浅草駅を出てすぐの浅草地下街にある。現存する最古の地下街は昭和の薫り漂うレトロな雰囲気。年季の入ったコの字型のカウンターには、常連客やサラリーマンがランチに立ち寄ったり、仕事の合間の小腹を満たしたり、夕方には一日の疲れを癒す人たちがやってくる。一見すると一杯飲み屋のようだが、ここの名物は焼きそばだ。店の一角には鉄板で焼きそばをつくる様子が見えるようになっていて、オープンな雰囲気が客を引き寄せる。昔ながらのアルマイトの平皿に盛られた焼きそばは、しっかりソースの味がしみ込んだ懐かしい味。独自にブレンドしたソースは酒のアテにもぴったりで、長年愛されてきた風格を感じさせる。

めまぐるしく変化する東京で変わらずに営業を続けてきたこの店で、お祭りや海の家で食べた焼きそばの思い出に浸ってみるのも悪くない。


福ちゃん

住所:東京都台東区浅草1-1-12
TEL:03-3844-5224
営業時間:11時30分〜21時(火〜金)、11時〜20時(土、日)
定休日:月 

※営業日時・内容などが変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。

異次元のおいしさを極めた、焼きそば界の新顔

「スーパー焼きそば」¥800(税込)はトッピングの辛子マヨネーズ、土佐酢、七味を加え好みの味に。冷めてもおいしくテイクアウトも人気。

日本の国民食ともいえる焼きそばを極めたい。そんな情熱を胸にオーナーの黒田康介さんが昨年8月、下北沢店に次いで神保町に出店。

まずは皿に盛られた麺が渦を巻いているのに注目してほしい。ゆでたての麺を冷蔵庫で寝かせ、水分を適度に浸透させたあと、中華鍋の鍋肌に張り付くように焼き付けることで均一に熱を通すのだが、これによって麺による美しい渦が生まれる。さらに鍋底に投入したソースで全体を蒸し上げ、麺にしっかり味を絡ませる。麺のもっちりした歯ごたえを活かすため、ソースは出汁を加えたあっさり味。これに下味をつけた豚肉と大きめにカットして歯ごたえが残るよう炒めたキャベツを加え、コンベクションオーブンでとろふわ半熟に仕上げた目玉焼きをのせれば、目にも美しいスーパー焼きそばの出来上がり。一本一本にまで麺への愛が感じられるひと皿は、焼きそば界の新しい扉を開けるニューカマーだ。


東京焼き麺スタンド  神保町店

住所:東京都千代田区神田神保町1-5-13
TEL:050-5597-6545
営業時間:11時〜21時(月〜金) 11時〜17時(土、日、祝)
無休

※営業日時・内容などが変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。

※Pen2020年8/15号「夏の麺喰い。」特集よりPen編集部が再編集した記事です。