築地のお座敷天ぷら「おかめ」で、江戸前の空間にどっぷり浸る。

築地のお座敷天ぷら「おかめ」で、江戸前の空間にどっぷり浸る。

写真:大河内 禎 文:浅妻千映子

「おかめ」の店内。まさに屋台を部屋に閉じ込めたようだ。こちらは7人までの部屋。他にひとつ、3人までの部屋がある。天ぷらの皿の前には必ずつまみが交互に出るスタイルで、酒飲みにも嬉しい。

屋台で食べられていた天ぷらも、江戸末期には座敷内で楽しめるようになった。独自の進化を遂げた「お座敷天ぷら」の中をのぞいてみよう。

3代目のご主人、柴田雅夫さん。客間の裏でつながった厨房を行き来し、2部屋の天ぷらをタイミングよく揚げる。

江戸末期、天ぷら屋台から新たな流れが誕生した。出揚げ天ぷら、つまり出張天ぷらである。コンロと鍋、ネタを詰めた箱を持って座敷に上がる。福井扇夫という人物が、これでたいそうな繁盛を極めたという。その後、出揚げ天ぷらが契機となり、お座敷天ぷらが誕生。明治後期には、一組にひとつの部屋を用意し、客にはひざ掛けナプキンや食後のおしぼりを用意するという、行き届いたサービスの店ができた。いまでいう富裕層に向けたお座敷天ぷらスタイルが確立していったのだ。


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