真摯に江戸前鮨の伝統と向き合う、若き職人たちの4軒

真摯に江戸前鮨の伝統と向き合う、若き職人たちの4軒

写真:殿村誠士(はっこく)、大河内 禎(鮨 み富、さき田)、上田佳代子(海界) 文:森脇慶子

百花繚乱の鮨店がひしめく東京。そのなかでも若い視点で柔軟に、かつ真摯に江戸前鮨のあり方に向き合う注目の店を訪ねた。


【銀座/はっこく】握り30貫で、世界に向けて江戸前を伝える

看板メニューでもあるマグロ。コースでは少しずつ部位の異なる5貫が登場。写真はそのひとつで赤身のヅケ。撮影当日は166㎏の三厩産本マグロ。

佐藤博之さん40歳。25歳の時に鮨の世界へ。神泉「秋月」で6年間修業。2013年に「鮨とかみ」を任されミシュランの星を獲得。2018年2月に「はっこく」をオープン。

世界にきちんとした江戸前鮨を広めたい。「はっこく」ご主人の佐藤博之さんの切なる願いだ。デンマークからの研修生を迎え入れたり、各国の料理人とのコラボを計画したりと鮨のグローバル化を見据え、その目は広く世界に向けられている。
その反面、鮨自体のあり方は原点回帰。つまみは一切出さず、握りのみ30貫で勝負するスタイルは決して奇をてらったわけではなく、江戸前鮨本来の姿をいま一度熟慮した結果のことなのだ。
いわく「鮨屋の主役はシャリであり握り。だから、魚はすべてシャリに照準を合わせて仕事をしている」そうで、そのために魚の水分をコントロール。魚自体の旨味を引き出し、シャリと合わせた時にいちばん旨味を感じるように仕込むなどの手間をかけている。それが佐藤さんの考える江戸前だからだ。マグロの突先の海苔巻きから始まるコースでは、〆たり煮たりヅケにしたりするだけではなく、低温調理で火を入れたり、香りで変化をつけたりと、最後まで飽きさせぬ工夫がなされている。
江戸前鮨の未来形がここにある。

コースはスペシャリテの「突先」から始まる。突先とは、マグロの頭の付け根の部分で、よく動くため旨味が濃い。

竹岡産キスの昆布〆。うす塩した後、昆布で2〜3時間〆て軽く水分を抜いている。優しい味わい。

コースの握りの締めは対馬産のアナゴ。ふんわりとしたやわらかさに思わず笑みがこぼれる。

東京都中央区銀座6-7-6 ラペビル3F 
TEL:03-6280-6555 完全予約制
営業時間:17時~22時最終入店 
定休日:日、祝


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