東京の下町、三ノ輪の昭和レトロなお店【中編】

  • 写真:殿村誠士
  • 編集・文:今村博幸

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【前回を読む】東京の下町、三ノ輪の昭和レトロなお店【前編】


鳥喜(焼き鳥)──名物のだし巻き卵と、チキンロールが絶品。

手前がコクのあるタレがしみ込むチキンロール。卵焼きは長ネギが味を引き締めるアクセントになっている。

鶏肉店で修業を積んだ須藤武夫さんが開いた人気店。酒のつまみにもなるが、子どもでも喜ぶ味を目指す。

ネギと鳥の挽き肉が入っただし巻き卵は、甘めの味付けがクセになる一品。醤油をちょっとたらすと、旨味がグッと増す。もうひとつの名物が、チキンロール。鶏肉で巻いたゴボウのコリッとした食感が肉の味を引き上げる。飯を余分に食べてしまう美味さだ。

「三ノ輪は、すべてにおいてフランクで、気取った人なんていないから、本当に気楽な街です。話が弾むと、ちょっとしたおまけもついあげちゃいます」と、店主須藤さんが苦笑い。

おやつ代わりに、子どもたちが焼き鳥を買っていく。そんな昭和っぽい風景に出合えるのも嬉しい。


東京都荒川区南千住1-26-9
TEL:03-5811-5123
営業時間: 10時〜18時 
定休日:水、年末年始 


さかい食品(ぎょうざ)──さりげない味だけど、もっと食べたくなる。

客がひっきりなしに訪れ、餃子を20個、30個と買っていく。「三ノ輪のお客は、舌が肥えてますよ」と根本さん。

おいしくするための工夫が随所にちりばめられた「さかい食品」の餃子。中身は、ニラ、キャベツ、ネギ、豚肉。味の秘密は先代から変わらない配合の割合だと店主根本勝利さんは言う。個性を出すことに心を砕くとも。

「材料をどう仕込むかによって味は変わります。他では経験できない味を出すことを目標に毎日つくっています」

噛み締めた瞬間に、野菜や肉の味が渾然一体となって口の中に広がり、いつまでも残らずにスーっと消えていく。

「なにげない味でいいと思うんですよ。ただ、もうひと口、もう一度食べたくなるのがうちの餃子の特徴です」

先代の味を受け継ぐ昭和気質の職人がつくる美味い餃子。ここの餃子のファンは多い。


東京都荒川区南千住1-20-3 
TEL:03-3806-4323
営業時間:9時30分〜20時
定休日:水、年末年始


小島味噌店(味噌店)──独自ブレンドの味噌は、唯一無二の味わい。

味噌樽にかぶせた三角の蓋が懐かしい。分量の少ないお試しサイズも用意。どこまでも気が利いている。

いまでは珍しくなった味噌を量り売りする店がある。「小島味噌店」だ。女将の小島智恵子さんが説明する。

「うちでは、複数の蔵の味噌を独自の配合でブレンドしています、こちらにあるのは、4種類の味噌が入っていますよ。混ぜることで、酵母菌が作用し合ってさらにおいしくなるんです」

つまり、唯一無二、この店ならではの味噌だ。量り売り初心者にも安心なのは、辛め、甘め、豆の粒が入っているものなど、好みを言えば、最適な味噌を選んでくれること。また、ショウガやミョウガの味噌漬けも試したい。ご飯のおかずに常備したい一品だ。

自分好みの味噌を探すのも一興。味噌汁が美味いだけで、食卓のグレードは数段アップするのだ。


東京都荒川区南千住1-22-9
TEL:03-3891-4965
営業時間:10時〜18時30分
定休日:火、水、年末年始


リビングショップ オバタ(生活雑貨)──昔なら当たり前だった、アナログな道具たち。

創業したのは1954(昭和29)年。ここでしか買えない昔ながらの家庭用品を、遠くから買いに来る客もいる。

昔の道具から懐かしい暮らしが透けて見えるのが、「リビングショップ オバタ」だ。昭和の頃にはどの家庭にもあった商品が、ところ狭しと並んでいる。

ここで売られているのは、ほぼすべて手動。しかしそれがかえって便利なこともあるのだ。最大の利点は、電気がなくても使えること。現代の暮らしは、電気が止まればなにもできないが、昔なら逆。たとえばほうき。ちょっとしたゴミを片付けるなら、電気掃除機を物置から出して使うよりもかえって早い。

また、アルミ製の鍋も結構売れると、ご主人。理由は、お年寄りが使い慣れたものを好むからだという。

他にも、実は高性能な亀の子束子、カゴ状の鼠取りなど、原始的な道具も。懐かしさで買う客も多い。


TEL:非公開
営業時間:10時〜19時
定休日:水、年末年始


こちらは2020年12月15日(火)発売のPen「昭和レトロに癒されて。」特集よりPen編集部が再編集した記事です。
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