新潟の砂地でつくられる、“サステイナブル”な赤ワイン

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    鹿取みゆき・選&文  尾鷲陽介・写真

    新潟の砂地でつくられる、“サステイナブル”な赤ワイン

    カベルネ・フラン2017フェルミエ

    新潟県新潟市の越前浜にあるワイナリー、フェルミエのホームページには、自然なアプローチのワインづくりを実践するつくり手の本多孝さんの考えが記されている。

    「有機栽培や無添加のワインづくりを目的としたわけではなく、土地やブドウの個性を素直に表現するために15年かけてたどり着いた結果です」と本多さん。ここに至るまで試行錯誤を繰り返し、さまざまな取り組みを続けてきた。

    畑には、化学肥料ではなく堆肥を中心に使用。ワインの滲み出るような味わいの広がりがなくなるので、除草剤は撒かない。こうした10年以上にわたる土づくりの結果、土壌とブドウのバランスに手応えを感じられるようになり、樹齢が10年を超えたカベルネ・フランとアルバリーニョについては2016年に化学農薬も撒くのをやめた。

    亜硫酸の添加量を極少量にして醸造し、発酵の初期段階では野生酵母に任せる。砂地で育てたカベルネ・フランを使ったワインは、味わいの広がりがしなやかで上品な余韻が特長的。そうした特性を引き出すには、亜硫酸を加える量を極力減らし、野生酵母の力を借りることが重要だ。その一方でわずかながらも亜硫酸を使うのは、野生酵母のみで発酵させると発酵途中で好ましくない匂いが発生し、カベルネ・フランのポテンシャルが覆い隠されてしまう可能性もあるからだという。野生酵母による発酵が順調に進むように、ブドウの粒に至るまで選りすぐっている。

    もちろん、変化はワインにも表れている。17年のワインは、コルクを抜いた途端にふわっと花のような香りが感じられ、グラスに注げば、部屋の中はその香りで満たされる。口に含めば、ベリー系の果実や花のようなフレーバーが広がる。攻撃的な渋みや青臭さは微塵もなく、余韻も芳醇だ。ボルドーのワインとは異なるが、じつにしなやかでエレガントだ。

    「ブドウや土壌に優しいワインづくりをすることで、その土地に根差した持続性のあるワインづくりが可能になると考えています」と本多さん。彼は、10年どころか100年先のワインづくりを見据えている。こうした自然環境やブドウを尊重するアプローチを続けることで、このワイナリーのカベルネ・フランは進化を続けている。

    ワインの色は深く、黒みがかった赤紫色。従来のカベルネ・フランに比べて芳醇な香りが特徴的だ。本多さんはいまも亜硫酸無添加、野生酵母のみの発酵にも挑戦しており、この越前浜という土地、さらにはそれぞれの年に適したスタイルの探求を続けている。

    カベルネ・フランの畑はワイナリーの前にある。2005年に自身も植樹した。アルバリーニョの畑とともにカーブドッチから譲り受けた。「カベルネ・フラン2017」は樹齢12年のブドウを収穫してつくられた。ちなみにアルバリーニョもフェルミエの代表的なワインとなっている。

    自社畑面積/2.0ヘクタール  

    栽培醸造家名/本多孝

    品種と産地/カベルネ・フラン(新潟県新潟市)

    ワインの容量/750ml

    価格/¥11,000(税込)

    造り/ブドウを冷却し、醸造場内10℃の環境で選果台にて選果後、除梗。その後7ppm相当の亜硫酸を添加。除梗後も手作業できれいな粒を選び、軽く破砕してドライアイスで覆いながらステンレスの開放タンクへ投入。除梗破砕70%、全房30%。5日間8℃の低温で浸漬してから野生酵母で発酵。発酵期間は14日(発酵の途中で培養酵母を加える)。樽熟期間は13カ月(新樽率50%)。無ろ過・無清澄。製造過程全てを通してポンプは使わない。

    栽培/収穫は2017年10月15日。ギュイヨ・ダブルの垣根仕立て。有機質に乏しい砂地土壌ゆえ毎年、堆肥といずれも有機の貝化石・微量要素を投入。除草剤も撒かない。農薬に関しては、従来の減農薬栽培レベルから2016年以降、10年を経過したアルバリーニョ/カベルネ・フランの畑は無化学農薬栽培に。雨上がりで気温が22〜27℃の場合、送風をするなどして病気を防いでいる。

    問い合わせ先/フェルミエ TEL:0256-70-2646      https://fermier.jp

    ※この連載における自然派ワインの定義については、初回の最下段の「ワインは、自然派。について」に記載しています。また極力、栽培・醸造についての情報を開示していきます。