15品種を使用した、 ジューシーで野趣に富む赤。
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鹿取みゆき・選&文  尾鷲陽介・写真

15品種を使用した、 ジューシーで野趣に富む赤。

2017 AYA ROUGE 香月ワインズ

黒みがかった深みのある赤紫色が美しいこの「2017 AYA ROUGE」。香りには、少し野趣が感じられます。そしてしばらくすると、オレガノ、フェンネルといったスパイスのような香りが次々と現れてきます。渋みはほとんどなく、口当たりはやわらかく、それでいて酸がしっかりと下支えしているのがわかります。

聞けばこのワインは、ボルドー地方で有名なメルロを中心に、レゲント、ドルンフェルダー、アクセント、生食用の藤稔(ふじみのり)など、15もの品種を使用。メルロはフランス系、レゲンドやドーンフェルダー、アクセントはドイツ系の品種です。かつての日本のメルロにありがちだった青臭さなど微塵もなく、ジューシーな果実味が印象的です。

つくり手は、宮崎県東諸県郡綾町で2017年に「香月(かつき)ワインズ」を立ち上げたばかりの香月克公さん。この15品種は、香月さん自身が両親から引き継いだ自社農園で育てたブドウです。

ブドウ園では、除草剤や化学肥料はもちろん化学合成農薬も一切使わない自然農法を採用しています。もともと自然が好きだった香月さんは、ブドウを育てるとしても、生態系には極力負荷をかけたくないと考えたからです。カビが原因で発生する病気は、酢、重曹、そして墨パウダーを使って防ぎます。結実後は、1週間に1回、この3つを交互に撒いていくそうです。同時に一房ずつブドウをチェックして、傷んだ粒を取り除く作業を続けます。収穫したブドウは、健全な粒のみを選び出し、野生酵母で発酵させます。すべての工程を通じて、亜硫酸は添加していません。

こうした栽培や醸造の先に香月さんが描いているのは、家族、もしくは地域のコミュニティがベースのワインづくり。というのも、海外への輸出の拡大を目指すニュージーランドのワイナリーと地元密着型の家族経営のドイツのワイナリーで働き、自分が目指すべきは後者だという思いに至ったからです。

「どんなにおいしいワインやどんなに注目を集めるワインをつくっても、ワインづくり自体が楽しく、幸せなものでなければなんの意味もないと思いました」と香月さん。皆でブドウを収穫し、皆で食をともにして、皆で豊作を祈る……。地元の大学との共同研究など、連携もスタート。近い将来、この地域にどんなワインとコミュニティが育っていくのか楽しみです。

香月さんが好きなワインのスタイルは、やや野性味のあるタイプ。初リリースの2017年物は、異例の大雨の影響で収穫量が激減。周囲の酒販店などの協力を得て、やむなく値上げしました。今年のヴィンテージは値下げを予定しています。

化学合成農薬を使わない栽培を続けるためには、綾町の気候に適した品種を育てることが大切です。その品種を探し出すため、香月さんはクローンを含めて40品種を実験的に栽培中。綾町でも、自治体主導で地域社会と自然環境との持続可能な共生を築くための取り組みを行っています。南九州大学と香月ワインとの共同研究の中には、持続可能な農業をテーマにしたものもあるそうです。

自社畑面積/1ha
栽培醸造家名/香月克公
品種と産地/メルローをベースに、レゲント、ドーンフェルダー、アクセント、藤稔他15種類の品種(宮崎県東諸県郡綾町)
ワインの容量/750ml
価格/¥10,800(税込)
造り/除梗したもの半分、房ごとのもの半分を重ねて野生酵母で一カ月間発酵。酵素、酸化防止剤、浄化剤は無添加。無補糖、無補酸、無濾過・無清澄。亜硫酸無添加。約3回に分けて収穫して、同じタンクに収穫したブドウを加えて混醸。栽培は、無施肥、除草剤不使用、無化学合成農薬は使わず、酢、重曹、墨パウダーのみを撒いている。
問合せ先/ 香月ワインズ
http://katsukiwines.com

※この連載における自然派ワインの定義については、初回の最下段の「ワインは、自然派。について」に記載しています。また、極力栽培・醸造についての情報を開示していきます。

15品種を使用した、 ジューシーで野趣に富む赤。

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