新進のフレンチシェフが贈る、和の風味あふれる穴子のフリット
写真:尾鷲陽介 文:岡野孝次

新進のフレンチシェフが贈る、和の風味あふれる穴子のフリット

ネキ
日本橋
自由な発想によるフレンチ
種類豊富なナチュラルワイン
レコードで流れる心地よい音楽

「穴子のフリット/焼き茄子/カラスミ」¥2,200(税込)。穴子は西シェフが自らさばき、ベニエ生地(小麦粉と卵、炭酸水などを加えて泡立てたフランス流の衣)にくぐらせて揚げるため、サクッとした食感に。また茹でてレモンとオリーブオイルを効かせたモロヘイヤで彩りも添える。南アフリカ産「キュヴェ・クリント」はグラス¥990(税込)、ボトル¥6,930(税込)。ワインはナチュラルワインが中心。

2020年7月にグランドオープンした日本橋兜町のレストラン「ネキ」。前菜メニューを眺めれば、「穴子のフリット/焼き茄子/カラスミ」に目が留まる。江戸前料理を代表する食材・穴子と焼き茄子の組み合わせは、フランス料理では珍しい。夏が旬の穴子は脂が控えめで後味もあっさり、存分に身のおいしさを堪能できるが、ここに生クリームとバターを加えて煮詰めた焼き茄子ソースのコクと香ばしさ、カラスミの凝縮された塩味が押し寄せる。その旨味の応酬にたまらず、ペアリングされたワイン「キュヴェ・クリント」をあおれば、ベリー感のあと、ほのかに梅じそに似た余韻も。新進のフレンチシェフが贈る、和の風味あふれるひと皿だ。

フランスへの留学を経て、いまはなき東京の二ツ星レストラン「キュイジーヌ[s]ミッシェル・トロワグロ」では料理の技術を、代々木公園「パス」のシェフ・原太一氏がオーナーを務める渋谷「ビストロ ロジウラ」では、料理への自由な発想を学んだと話す西恭平シェフ。スペシャリテ「フランス産鴨胸肉の炭火タレ焼き」は、フレンチでは定番の鴨と柑橘ソースの組み合わせに、醤油ダレを添える意欲と美しさに満ちた皿だ。一方でランチではサンドイッチを提供、また夜もパテとワイン一杯から利用OKというから、カフェのような気軽さも魅力だ。

「居心地のいいカフェのような空間で、おいしい料理を出したい」というのが、西シェフが料理人を目指した原点。ゆえに開放的すぎるくらいのオープンキッチンに大きな採光窓、店内の天井も高い。またスピーカーからはレコードの音がやわらかく流れる。ランチの人気は「プルドポークのグリルホットサンド」¥1,045(税込)

ネキが位置するのは日本橋兜町。バブル崩壊、また証券取引の電子化で往時の勢いを失っていたこの界隈では、国際金融都市・東京の一翼を担うべく再開発が進行中だ。多様な世代が集う場にすべく街を挙げて個性豊かな飲食店の誘致にも意欲的。ネキと同時期に、近隣にパティスリー「イーズ」も開業した。8月にはブルーパブ(醸造所併設のパブ)やワインバーもオープン。

新進のフレンチシェフが贈る、和の風味あふれる穴子のフリット