自宅で手軽につくれる、夏麺レシピで乾杯!

  • 写真:長谷川 潤
  • 編集&文:吉田けい
  • スタイリング:西﨑弥沙

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自宅で過ごすことが多くなった休日、料理にもチャレンジしたい。料理研究家の平野由希子さんに、簡単な夏麺レシピに加え、それに合わせる酒も提案してもらった。

【自家製チャーシューの冷やし中華】──具材をぐっとシンプルにして、チャーシューの旨味で勝負する。

夏の麺料理の定番、冷やし中華を自宅でつくるなら、のせる具材を厳選し、手づくりチャーシューで特別感を底上げしてみるのもいい。チャーシューづくりと聞くと、時間と労力がかかりそうなイメージがあるが、実はとても簡単につくる方法がある。煮込みには時間をかけず、30分程度がしっとり仕上げるコツだ。

そんなチャーシューが主役の冷やし中華には、風味豊かなクラフトビールを。無濾過やIPAなど、ホップの香りが強めのタイプなら、肉の味わいをさらに膨らませ、ペアリングをより深いものにしてくれるはずだ。


【自家製チャーシュー】
材料(つくりやすい分量)
豚肩ロース肉(ブロック)…500g 
醤油…1カップ 
酒…1/2カップ 
みりん…1/2カップ 
砂糖…大さじ4 
長ネギ(青い部分)…1本
ショウガ(薄切り)…2枚
サラダ油…少々


つくり方
1.フライパンにサラダ油を熱し、ネットをかけた豚肩ロース肉全体を焼く。

2.材料を入れて中火にかけ、煮たったら弱火で30分煮る。

30分煮込んで、粗熱がとれた状態の豚肩ロース肉。この旨みが凝縮された煮汁を、冷やし中華のタレに使用するのがポイント。

【冷やし中華】
材料(2人分)
中華麺…2玉 
チャーシュー…150g
キュウリ…1本 
長ネギ…1/2本
ラー油…小さじ1
塩…少々
ディジョンマスタード…適量
(A)
チャーシューの煮汁…大さじ3
酢…大さじ2
水…大さじ2
胡麻油…小さじ1


つくり方
1.チャーシューは太めの千切り、キュウリは千切り、長ネギは縦半分に切ってから斜め5㎜幅に切り、水にさらす。ボウルにキュウリ、長ネギを入れ、塩をふって混ぜたら、チャーシューとラー油を加えて和える。

2.湯を沸かし、中華麺をパッケージの表示通りにゆで、冷水にとった後、しっかりと水けを切る。

3.器に2.を盛り、(A)を混ぜ合わせたものをかけ、1.をのせる。ディジョンマスタード(辛子でも代用可)を添える。

合わせたいクラフトビール

無農薬栽培の新鮮なホップを使用し、年に1~2回だけつくられるビール。無濾過ならではのソフトな口当たりが特徴で、やわらかな麦芽の味わいが豊かに広がる。インテグラーレ330ml ¥946(税込)/ザゴ(ノンナアンドシディ TEL:03-5458-0507)

【海老麺の香港風焼きそば】──香ばしいエビの香りが、食欲と酒欲を誘う。

「香港大好き!」と言う平野さんイチオシの、海老麺を使用した香港風の焼きそば。具材も調味料もごく簡素ながら、香ばしいエビの風味が口の中いっぱいに広がり、麺を引き上げる箸が止まらなくなる。

焼きそばの具はモヤシと青ネギ、ショウガのみ。このネギやショウガといった香味野菜を利かせた料理には、ハーバルなクラフトジンがしっくりと馴染む。具材の香りと麺の香り、そしてジンの香りが幾層にも重なって、深く厚みのある味わいとなる。ジンはソーダ割りがお薦めだ。


材料(2人分)
海老麺(乾麺)…2玉
モヤシ…1/2袋
青ネギ(九条ネギなど)…2本
ショウガ(薄切り)…3枚
オイスターソース…小さじ1/2
醤油…大さじ1
胡麻油…大さじ1 
塩、胡椒…各少々


つくり方
1.青ネギは斜め切り、ショウガは太めの千切りにする。モヤシは水にさらしてシャキッとさせた後、ひげ根と芽を取る。根切りモヤシを使ってもOK。

2.湯を沸かして海老麺をゆで、ほぐれたらすぐ、ざるにとり、水けを切る。

3.フライパンに胡麻油と1.のショウガを入れて熱し、よい香りがしてきたら、1.の青ネギ、モヤシ、2.の麺を加えて炒め、オイスターソース、醤油、塩、胡椒を加えて炒め合わせる。

合わせたいクラフトジン

トスカーナの有機小麦と、ジュニパーベリーやコリアンダーなど、7種の植物を使用。ジュニパーベリーの他、シトラス風味も特徴的。ジンプライオ500ml ¥6,270(税込)/レヴァンテ スピリッツ(ノンナアンドシディTEL:03-5458-0507)

【汁なし担々麺】──花椒の痺れと豆板醤の辛みで、夏らしい爽快な味わいに。

濃厚な胡麻ダレと、花椒が爽やかな肉味噌を、麺と絡めて食べる汁なし担々麺。山椒の“痺れブーム”により、いまやすっかり人気の麺料理となったが、家でつくれば痺れも辛みも好みに合わせて調整が可能だ。

辛い料理には、なんといってもテキーラ。強くキレのある味わいが、あとを引きがちな辛みを切ってくれる。テキーラと同じくアガベを原料とする酒でも、スモーキーな香りを放つ「メスカル」ならば、より奥深いペアリングの妙を楽しめるはず。


材料(2人分)
中華麺…2玉(太麺、または平打ち麺)
豚挽き肉…150ℊ
長ネギ(粗みじん切り)…1/3本
ザーサイ(粗みじん切り)…20ℊ
松の実(またはピーナッツ)…大さじ1
サラダ油…大さじ1
香菜…適量
花椒(パウダー)…適量

(A)
花椒(キッチンペーパーに包んでコップの底などで潰しておく)…小さじ1/2~1
ニンニク(みじん切り)…1片
ショウガ(みじん切り)…1片
豆板醤…小さじ1
(B)
酒、醤油、甜麺醤…各大さじ1
(C)
練り胡麻(白)…大さじ3 
醤油…大さじ2
すり胡麻、酢、ラー油…各大さじ1
鶏ガラスープ…小さじ1/2
水…大さじ4


つくり方
1.肉味噌をつくる。フライパンにサラダ油、(A)を入れて中火で炒める。香りが出てきたら、豚挽き肉を入れて炒め、(B)を加えて調味したら、長ネギ、ザーサイを加えて混ぜる。

2.(C)を混ぜ合わせ、ボウルに入れておく。

3.湯を沸かし、中華麺をパッケージの表示通りにゆで、冷水にとった後、しっかりと水けを切る。

4.器に2.のタレを引き、その上に3.の麺を盛り、1.をのせる。さらに松の実、ざく切りにした香菜をのせ、好みで花椒(パウダー)をふる。

合わせたいメスカル

メキシコの小規模なつくり手が手がける個性豊かなメスカル。炭火の香りと、トロピカルな風味が広がり、後味はビター。トバラ500ml ¥11,000(税込)/エル・デスティラード(ダブリュー http://winc.asia

【ウニの冷製スパゲッティ】──旬のウニを、素材そのままに味わいたい。

夏に旬を迎えるウニを麺料理に使うなら、涼しげな冷製スパゲッティをお薦めしたい。調味料は、シンプルにオリーブオイルと塩だけ。とろりとした卵黄が、ウニの風味をリッチかつクリーミーにまとめあげてくれる。そんなウニソースとしっかりと絡むよう、スパゲッティは細めのものを選ぶといい。

独特の後味が残るため、ペアリングが難しいとされるウニ。出汁にも似た発酵系の旨味を感じるオレンジワインなら、相性は最高だ。


材料(2人分)
細めのスパゲッティ…100ℊ
ウニ…60ℊ
卵黄…1個
オリーブオイル…大さじ2
ディル…適量  
塩、粗挽き黒胡椒…各少々


つくり方
1.ウニの2/3量に卵黄、オリーブオイル、塩を加えて混ぜる。

2.塩(分量外)を加えた湯で、スパゲッティをパッケージの表示通りにゆでる。ゆで上がったら冷水にとり、キッチンペーパーで水分を吸い取りながら、しぼるようにしてしっかりと水けを切る。

3.1.のボウルに2.のスパゲッティを加えて和え、塩(分量外)で味を調える。

4.器に3.を盛り、取り分けておいたウニ、ディルをのせ、粗挽き黒胡椒をかけ、オリーブオイル(分量外)を回しかける。

合わせたいオレンジワイン

クヴェヴリというジョージアの伝統的なかめで熟成。青リンゴのような香りと蜂蜜、スパイシーなバニラのニュアンスを感じさせる。ムツヴァネ2012 750ml ¥3,740(税込)/フェザンツ・ティアーズ(ノンナアンドシディTEL:03-5458-0507)

【からすみとキュウリのそうめん】──左党のためのそうめんは、キュウリの食感がアクセント

すぐにゆでられる極細のそうめんは、きっと誰の家にもある乾麺のひとつ。子どもの頃から慣れ親しんだ食材も、からすみとオリーブオイルを加えるだけで、大人の楽しみを広げてくれる一品へと変化する。

そんな“大人のそうめん”にぴったりな酒がシェリー。食前酒のイメージが強いが、実は、からすみのように複雑な風味をもつ食材にも難なく寄り添える、懐の深い酒なのである。暑い日にはオン・ザ・ロックにすると、また格別。“和食にシェリー”が新たな夏の定番となりそうだ。


材料(2人分)
そうめん…150ℊ  
キュウリ…2/3本
ボッタルガ(からすみ)パウダー…大さじ6~
そうめんつゆ(ストレートタイプ)…3/4カップ
オリーブオイル…適量


つくり方
1.キュウリは千切りにする。塩(分量外)をふり、しんなりさせる。

2.湯を沸かし、そうめんをパッケージの表示通りにゆで、冷水にとった後、しっかりと水けを切る。1.のボウルに加えて和え、器に盛る。

3.器に2.を盛り、そうめんつゆをかけ、ボッタルガパウダーをたっぷりとふる。最後にオリーブオイルを回しかける。

合わせたいシェリー

スペイン屈指のメーカーの自信作。海辺の空気を感じさせる重厚感たっぷりの味が魅力。ベリーズ・フィノ・ヘレス750ml ¥2,024(税込)/エミリオ・ルスタウ(ベリー・ブラザーズ&ラッドTEL:03-3518-6730)

こちらの記事は、2020年 Pen 8/15号「決定版 夏の麺喰い。」特集よりPen編集部が再編集した記事です。