真夏に飲みたい、にごりスパークリング
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鹿取みゆき・選&文  尾鷲陽介・写真

真夏に飲みたい、にごりスパークリング

ナチュラルスパークリング さっぽろ藤野ワイナリー

猛暑が続いています。こうした真夏の最中では、飲み始めはとりあえずビールで乾杯という人が多いかもしれません。けれど、私自身はビールがあまり得意ではありません。初めの1杯こそおいしいと思うのですが、飲み続けるのはちょっと苦手。そんなビール苦手派の喉を潤すのにぴったりなのが、この微発泡酒「ナチュラルスパークリング」。札幌郊外にある、さっぽろ藤野ワイナリーでつくられたワインです。つくり手はまだ20代の浦本忠幸さん。注目しているつくり手のひとりです。

とあるワインのイベントで、このワイナリーのワインを飲んだ浦本さんは、優しい口当たりとピュアな味わい、そしてその向こう側にあるつくり手たちの思いに感動し、研修を経てワイナリーの醸造担当になりました。「僕にとって、ワインとは当たり前のようにナチュラルなワインでした」と、浦本さんは振り返ります。

とはいえ、スパークリングワインをナチュラルにつくるのはそんなに容易なことではありません。微発泡酒ができたのは、発酵途中にワインが瓶詰めされても、瓶中でさらに発酵が続き、発生した炭酸ガスの行き場がなくなってワインに溶け込んだから。けれど瓶の中は、野生酵母にとって厳しい条件となるようです。「通常のシャンパーニュでは、既につくったワインに糖分と培養酵母を加えて2度目の発酵をさせます。僕らは、ブドウ果汁を加えるだけで、培養酵母も添加物も一切加えず、野生酵母のみで発酵を終わらせます」と浦本さん。健全なブドウを使うことがなにより大切ですが、野生酵母が生き生きとした状態で働けるように、瓶詰めのタイミングの見極めにも細心の注意を払うそうです。「ブドウが健全だから、仕込みの時に亜硫酸を加えずに済んでいます。そして瓶詰め後も瓶内の炭酸ガスがワインを守ってくれるので、すべての行程で亜硫酸を加えずにワインをつくることができました」。出来上がったワインは、ほんのすこし濁っている″にごりスパークリング”。でもそれは、味わいに旨味やまろやかさを感じられるように、澱(酵母の死骸)を取り除いていないから。アルコール度数は低めで、ピュアな柑橘の味わいが実にジューシー。そして小気味よい酸が生き生きとしていて爽快そのもの。抜群の飲み心地で、ついつい杯を重ねてしまいます。

ラベルデザインは浦本さんの奥さんによるもの。爽快な味わいは、涼し気な酸がポイントとなっています。最近では、北海道でさえ温暖化で酸が落ちてしまう年もあるといいます。浦本さんは、酸の量にも気を配りつつ、収穫時期を決めているそうです。

ワイナリーでナチュラルワインといわれるタイプのワインがつくられるようになったのは、代表の伊與部(いよべ)淑恵さんの思いがありました。亡くなった淑恵さんの弟さんが病弱で、彼でも飲めるような、身体に馴染むような優しい味わいのワインをつくりたいと思ったのが始まりでした。

ワイナリー名/さっぽろ藤野ワイナリー
自社畑面積/1.8ヘクタール(藤野1ha、栗沢0.8ha)
醸造家名/浦本忠幸
品種と産地/ケルナー、ミュラー・トゥルガウ(北海道後志地余市郡方余市町)
容量/750ml 
価格/¥2,700(税込)
つくり/野生酵母で発酵途中に瓶詰め、ゆるやかに発酵。亜硫酸無添加、糖分や酸の添加なし
www.vm-net.ne.jp/elk/fujino




※ 「ワインは、自然派。」について
本連載では、ブドウの栽培からワインの醸造まで、できるだけ自然につくられた自然派ワインやナチュラルワインを紹介していきます。「自然につくる」とは、どういうことでしょうか? この連載では、醸造に関しては、「人の介入を最小限にすること」としています。 発酵では、「仕込み、あるいは瓶詰め時に亜硫酸を添加しないこと」。あるいは「添加したとしても 極少量に限定していること、培養酵母は使わずに野生酵母に発酵を委ねること、添加物を加えないこと」。また、「糖分を加えたり、酸を調整したりはしないこと、清澄剤も使わず濾過も行わないこと」。これらを実践すること、と捉えています。栽培に関しては、化学合成農薬の不使用を前提としたいところですが、日本の気候条件下において、有機農業でワイン用ブドウを栽培するのは、現状では非常に困難であるため、時には最低限の農薬を使用せざるを得ない状況です 。また、原則として、除草剤や化学肥料は使わないことも前提です。こうしたワインづくりを実践しようとするのならば、それだけブドウは健全なものでなくてはならなくなり、醸造では細やかな心配りも欠かせなくなります。連載では、風土に敬意を払い、できるだけ自然にブドウを育て ワインをつくろうとするつくり手たちと、彼らのワインを紹介します。

真夏に飲みたい、にごりスパークリング

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